Front mission Brockede

Mission-24 Sandfileds war

 

アルジェリア中部 2315時

『・・・発見したぞ、隊長。』

1時間近くかけて、ようやく輸送ヘリはUSN軍の部隊を補足した。ハーネルが真っ先に気づくとパイロットは不安げに声を漏らす。

『中佐、本当にいいんですか?USN軍が相手で・・・』

「お前も軍人なら任務を全うしろ。ガトリングを掃射すればいい。」

冷静にカダールは任務を伝える。敵の戦力はレクシスとガスト、グラップルで編成されている、塗装も紫色であり肩部分が朱色の塗装を施されている。

『敵機はパープルヘイズ・・・厄介だね。数も向こうが多いけどどーすんのよ・・・そもそもリヴィエが捕らえられているなんて解るのかい?』

『解る。先ほど連中が送信した画像をハッキングして解析したらリヴィエがいた。最初からUSNはリヴィエを追っていたわけだ。』

『なるほどねぇ・・・って、あんたそんなこと出来たのかい?』

目を丸くしてリヴィエが驚くが、カダールが失礼だぞとたしなめる。

「ハーネルもいろいろあったからな・・・それより、どうやって数的優位をひっくり返すか・・・」

『隊長、無線によると彼らは廃坑を通過して近道を通るようだが。』

「すぐにその地図をスキャンしてくれ。もしかしたら、だが・・・直ちに廃坑へと向かえ。」

何か思いついたらしく、カダールはパイロットに指示を出す。そのままパイロットは廃坑へとACH59の進路を変える。

『隊長、リヴィエを助けないのかい?』

「連中はまず間違いなく廃坑を通るんだ。罠を仕掛ければうまく行くかも知れん。俺を信じろ。いいな?」

わかったよ、とレジーナはうなずく。ハーネルもまぁ大丈夫だろうと思いながら隊長の指示に従うことにしたが、予備のヴァンツァーを搭載しているのが気になるようだ。

『・・・いつの間に予備のヴァンツァーを配置したんだ?』

「補給基地によったときに積み込むよう俺が手はずを整えておいた。」

現地にあったパーツでくみ上げられた105式を見て、なるほどとハーネルはうなずく。リヴィエを解放したらすぐに戦ってもらうつもりなのだろう。

 

「・・・油断しました・・・」

リヴィエはため息をつきながら独り言をつぶやく。アイアンゲート(※1)装甲車のキャビンに押し込められ扉も開かないまま護送されている。

北西に逃亡したはいいのだが、合流地点に到着する前にUSN軍に拉致されてしまったのだ。USN正規軍とも交戦しているため、彼女はテロリストとして指名手配されていたのだ。しかしわざわざアフリカまで追いかけてくるなど予想もつかなかった。

『リヴィエ、聞こえるか?』

「えぇ。聞こえますが・・・」

小型の無線機だけは没収されなかったため、リヴィエは連絡を取る。

『・・・救出地点にいなかったがどういうことだ?』

「USN軍に拉致されましてね。通信する暇もありませんでした。装甲車で運良く1人なので話せる状態です。」

『そうか・・・朗報がある。カダール達の部隊が今廃坑へと先回りした。何かは分からんが救出の目処が立ったらしい。ただ、何をするか分からん連中だ。それなりの覚悟をしたほうがいい。』

「ですね・・・」

そっとリヴィエはうなずいてみせる。敵に回ったわけでもないが、何をしてくるか解らない相手というのも怖い。さすがに自分へと危害が及ぶ事はないだろうが、それでも恐怖心は拭い去れない。

敵もきっとこんな気分なのだろうと思っていると無線の相手が連絡をよこす。

『今廃坑に入ったが・・・あいつらがいない?』

「どうしたんですか?隊長がいないんですか?」

『輸送ヘリしか見えない・・・わからんな。襲撃するなら一番ここがベストだというのに。』

輸送ヘリがいるならきっと隊長も近くにいるのだが、無線の相手はヴァンツァーを補足出来ないという。そのままヴァンツァーと装甲車は廃坑のトンネルを抜ける。

『その中にヴァンツァーはいるか?』

「いません・・・廃坑をもうすぐ通り過ぎてしまいますね。」

まさか逃げてしまったのか、とリヴィエが一瞬だけ疑念を抱いた瞬間、唐突に轟音が鳴り響き一瞬だけ体が宙に浮くような錯覚を覚える。

続いて強い衝撃が装甲車全体に走り、スピーカーから音声が聞こえてくる。

『護送中の捕虜を解放しろ。さもなくば射殺する。』

『わ、解った・・・!』

聞き覚えのある声をリヴィエは聞いたが、扉が開けば真っ先に外に出る。そこには見慣れたシュトゥルムピングィンの機体があり、いつの間にか地下採掘場にいる。

「隊長・・・いつの間に?」

『採掘場の図面を調べたらトンネルの真下に採掘場があったからな。爆薬をセットしてここにうまく落とした。ここで落とせば俺達がやったという証拠は残らない。UAVや衛星の監視を逃れられるからな。』

「さすがですね、隊長。」

素直にリヴィエが感心すると、レジーナは笑みを浮かべながら無線を入れる。

『喜ぶのは後さ。105式を調達しておいたから早く乗りな。ここから逃げるんだ。』

「・・・はい!」

うなずくとリヴィエは廃坑から拾ってきたと思われる古いトレーラーに乗せられた105式に乗り込む。武装はライトシールドとクローニク10型であり、リペアバックパックを搭載している。

『リヴィエ、良い仲間を持ったな。しかしUAVや衛星の死角まで考えているとは・・・』

「末恐ろしいからこそ、仲間に引き入れる必要があるのでしょう?幸いにも、共通の敵もいますから。」

無線の相手もそうだな、と納得するとUSN軍のヴァンツァーが数機穴から降りてくる。ガストとグラップルが2機ずつ着地すると、グラップルがショットガンを向ける。

『き、貴様ら・・・シュトゥルムピングィン!?』

『・・・知らんな。』

塗装とエンブレムを見てUSN軍のパイロットは思わぬ強敵に驚愕してしまう。しかしハーネルは至近距離からショットガンを発砲。グラップルの前面装甲に皹が入ったのを見逃さずアゴーニをたたきつける。

分厚い装甲が真っ二つに割れ、操縦席にロッドが直撃しグラップルは沈黙する。あわててもう1機のグラップルがキャッツレイを発砲するが、狙いがそれて岩の壁に直撃する。

『戦闘中にあわてるとは、噂に名高いパープルヘイズもこの程度か?』

カダールが嘲笑しながらホーネットを発砲するが、グラップルの正面装甲が分厚く砲弾も貫通できていない。その隙にリヴィエがグラップルの背後からクローニク10型を発砲する。

装甲が比較的薄い後部から銃撃を受け、グラップルが火花を散らすがその間にガストがストームめがけ発砲。すぐにカダールはシールドで20mm機銃弾を防ぎつつガストめがけミサイルを発射する。持ち前の機動力でガストが回避するが、一瞬だけ隙が見えた。

『貴様、一体何者だ!こんな事をしてただで済むと思っているのか!?』

『思ってるよ。あんたらの口を封じればそれまでさ。』

レジーナがガストを狙撃。98mm徹甲弾が小振りなガストの胴体を貫通し爆発させてしまう。その隙にカダールは何発もバズーカ砲を発射。何とかグラップルは直撃しても持ちこたえるが4発目がグラップルの胴体に直撃し装甲を貫通、大爆発を起こす。

「さすがは隊長です。それに皆様もお変わりなく。」

『リヴィエ・・・何故USNに拉致された?』

何も言葉を挟まず、ストレートに理由を尋ねられリヴィエは言葉を失ってしまう。レジーナはその様子を見て助け舟を出そうとする。

『隊長、いきなり拉致されて理由なんてわかるやつが・・・』

『レジーナ、少し口を閉じていてもらおう。』

声を低くしてカダールが警告し、レジーナも黙るほかなかった。そのままカダールはリヴィエに詰め寄る。

『旅客機を狙ったのもUSNの差し金・・・そして今もパープルヘイズに拉致されかけた。心当たりがないならじっくり思い出せばいいが、休暇中に何をしていた?』

「・・・隊長。必ず話します。ですがシエラさんとアーヴィトさんにも必ず話しておきたいことなんです。この領域から脱出してからでもかまいませんか?」

冷静さを保ちながらリヴィエは答える。話す気があるならいい、とカダールがうなずく。するとパープルヘイズのヴァンツァーが坑道を通ってカダール達の場所までたどり着く。

『先遣隊を壊滅させただと・・・?貴様ら、ただの武装勢力ではないようだな。目的は彼女か!』

「さて、な。貴様らの横暴に耐えかねた民兵かも知れん。何にしても逃げないなら射殺する。それだけだ。」

声を荒げながらUSN軍のパイロットがヘキサファイアを向けるが、カダールは軽く受け流すように答える。

『その台詞、後悔させてやる!』

レクシスのパイロットが言葉を強めながらヘキサファイアを発砲。カダールはシールドで砲弾を防ぐとホーネットを発砲する。

それをグラップルが前に出て受け止め、キャッツレイを発砲しながら接近してくる。戦車とほぼ同等の正面装甲をもつグラップル相手に10cm砲弾では威力不足であり、歯が立たないと判断したのかカダールはレジーナに指示を出す。

『敵機の頭部をぶち抜け!』

『了解!』

グラップルは頭部が小さく、装甲も射線を妨害するため狙いにくい。しかし一番の弱点であり装甲配置の関係上予備センサーを配置できず頭部を打ち抜けば無力化できる。

レジーナは深呼吸してからトリガーを引く。98mm徹甲弾は側面からグラップルの頭部を破壊し、行動不能になった機体からパイロットが脱出する。

『よくやったぞ、レジーナ。』

『まぁ、何とかなるもんだね・・・!』

軽くカダールが礼を言いながらミサイルを発射する。2発のミサイルはレクシスへと直撃、胴体部分を一撃で吹き飛ばす。残ったレクシスはヘキサファイアを発砲するがあっさりとハーネルは回避。そのまま突進してアゴーニを振りかざす。

レクシスは頭部ごと胴体が叩き潰され、沈黙してしまう。すると坑道を通ってガストやグラップルなどがぞろぞろと進撃してくる。

『よし、全火器を坑道に向けろ!敵が出てきたら撃ちまくれ、弾丸を惜しむな!』

『了解!』

全員がいっせいに応答すると、まず真っ先に出てきたガストに集中砲火が浴びせられる。なすすべなくガストは破壊され、続いて進入したグラップルも猛烈な砲火を浴びせかけられる。

さすがに正面装甲は分厚く、簡単にグラップルは倒れなかったがリヴィエが装甲が比較的薄い側面部に集中砲火を浴びせる。30mm銃弾が貫通し、グラップルのエンジンブロックを破壊する。

燃料漏れに気づいたパイロットが脱出。そのままグラップルは炎上してしまう。

「敵戦力、レーダーから消滅。パープルヘイズの排除に成功しました。ところで隊長、シエラさんは?アーヴィトさんも・・・」

『あいつらは・・・哨戒任務中だ。事情があって、今別行動をとっている。』

「分かりました。合流・・・出来ますよね?」

もちろんだ、とカダールはうなずくといったん坑道をとおり外に出てから無線を入れる。暗いため外と坑道内部の区別はつきにくいが、無線の周波数の状態から判断できる。

『こちらカダール、シエラ、応答しろ。』

『隊長?よかった・・・今そっちに向かってる。』

『どうした?旅客機の護衛は?』

そちらに向かっていると言う言葉をきき、カダールがいぶかしがるがなんでもないよ、とシエラが答える。

『アフリカ連合の部隊がようやく助けに来てくれたよ。ちょっとばかりてこずったけどね。アーヴィト、生きてる?』

『あぁ・・・な、何とか。ナミクも無事だ。今そっちに輸送機で向かっている。』

よかった、とカダールが胸をなでおろす。何かあったらどうしようかと思っていたのだ。その間にリヴィエは無線の相手に連絡を入れる。その表情は真剣であり、差し迫った事態を予測していた。

「・・・そろそろ、すべてを話すべきです。」

『・・・だな。あの無人機の手際といい武装勢力の波状攻撃といい、本格的に連中も狙ってきたとしか言えんな。』

リヴィエもその言葉に納得すると、アフリカ連合軍のウェーバーd(※2)が着陸する。側面のハッチが開くとボロボロになったガストが現れる。その姿をみて、ハーネルが息を呑む。

『シエラ・・・お、お前よく無事で・・・』

『はは、まぁヴァンツァーが40機くらい来たからさ・・・さすがに苦戦したよ。』

何十発も銃弾が打ち込まれ、左腕の武器腕など形も成していない。胴体も火花を散らした状態で最後まで戦い抜いたようだ。アーヴィトのシケイダ2はそれよりもまだマシとは言えるが、武装の残弾は無く弾痕まみれ戸言うことに変わりは無い。

『40機!?そんなにか・・・』

『うん、アフリカ連合軍が来るのが1分遅かったら間に合わなかったよ・・・リヴィエは無事?』

カダールは予想外の戦力に呆然としていたが、その代わりにリヴィエが直接声をかける。

「私は無事ですよ、シエラさん。」

『よかった・・・リヴィエも無事で。任務完了だね・・・』

心底疲れきった様子でリヴィエが深く息を吐く。するとリヴィエは伝言を伝えるために無線で全員に連絡する。

「・・・私が捕まった原因を説明しなければなりませんね。皆様も合流しましたし。」

『・・・そうだったな。どうしてつかまったりしたんだ?』

まずはアーヴィトが質問をぶつけると、落ち着いてリヴィエが答える。

「世界規模のテロ組織が中南米連合に食い込むのを阻止し、その結果USN軍とも戦闘してしまったため、です。以前言ったテロ組織であるグリムニル、連中は全世界にネットワークを張り巡らせているのです・・・それを食い止めるために、私はある組織に入って連中の活動を食い止めていたんです。」

ACH59の準備が整うと、リヴィエ達のヴァンツァーを乗せて離陸する。その機内でリヴィエは無線の相手を紹介する。

「ギュンター・フォン・シュナイダー・・・EC統合軍の大佐で私の直属の上官です。挨拶をお願い出来ますか?」

『・・・あぁ、リヴィエはどうも説明が苦手でな。ノートゥングの実働部隊を指揮している。』

『・・・なるほど。グリムニルを相手にするためにノートゥングか。』

ハーネルはなるほどな、と納得してしまう。北欧神話のオーディンの別名がグリムニルであり、ノートゥングはニーベルンゲンの指輪という戯曲に出てくる剣でありヴォーダン(オーディンをモデルとした戯曲中の神)を倒したとされている。

『そういうことだ。もっとも我々がまいた種でもあるから何とかしなくてはならないのだがな・・・』

『まいた種?』

シエラが真顔で聞き返すと、少し長くなるぞ、とシュナイダーは前置きしてから話し始める。

『話は第1次ハフマン紛争にまでさかのぼる。この紛争でヴァンツァーの有用性が知れ渡ると同時に爆発的な規模で売れ始めた。ヴァンツァーは単機でもIFV1機の戦力に匹敵する。そんな兵器を武装勢力や民間企業が手に入れるようになってから各地で武装勢力によるテロが活発化した。正規軍が敗退するケースも増え、あせった各連合体の首脳部は武装勢力に対するアドバンテージをとろうとした。』

『・・・アドバンテージ?』

『ヴァンツァーをより強力にした兵器が必須だった。武装勢力やテロリストよりも常に優位を保たねば正規軍は機能しない。中世のように不確定勢力がのさばるのも困るからな。そこでメタルワーカープロジェクトが開始された。より大型のヴァンツァーでありながら規格を合わせ、既存のパーツでも稼動するような代物だ。開発は無事に進んでいたが、姿勢制御システムが一番の難点だった。』

『何で?』

シエラが真顔で尋ね返す。疑問符が多いな、とシュナイダーは愚痴をこぼすが答える必要があると感じてそのまま語り続ける。

『大型になればなるほど機体の揺れが激しくなる。それを制御するには大容量のコンピューターがどうしても必要だったのだ。他にも反応速度や容量などを考慮した結果、人の脳を使うことを決定した・・・培養脳や胎児の脳を使ったB型デバイスが開発されたが、動作が不安定で到底実戦に出せるレベルではなかった。これをシュネッケ、センダーやディアブルアビオニクス、ドミトーリ公社やサカタインダストリィの合同で研究していた。』

『・・・だが、20年も実用化出来なかったのか?』

シュナイダーが疑問符を投げかける。それほど一流のエンジニアが集まれば10年そこそこでうまくいくと思っていたようだがシュナイダーは違うな、と一蹴する。

『初の試みで数多くの分野にまたがっているからそれらをまとめるだけでも大変だった。兵器開発、医療、製薬、システムエンジニア・・・多数の一流メンバーを集めて製作しても、開発は難航した。そんな中、社長の変わったサカタインダストリィが資金不足を理由に一方的に手を引いてきた。それが・・・連中の始まりだ。』

『始まったって、まさかグリムニルが?』

『そのとおりだ。サカタインダストリィは撤収した後、極秘裏に創設していた私設傭兵部隊で我々の研究施設を破壊。あらかじめ取り込んでおいた技術者以外の大半を殺害した。そして技術者などが持っていたネットワークをすべて取り込み、我々が手をつけなかった非人道的な方向に研究を進めていった。直接、兵士から脳を取り出して制御システムに利用する事だ。ドミトーリ公社もこの計画に参加、最終段階を迎えた研究は完成し実践レベルに投入可能となった。その間、いくつもの派生研究も行っていたようだがな。パペット・ソルジャー・プランやS型デバイスと言った物だ。』

なるほど、とアーヴィトは聞き入りながら途中途中であがる名前を思い返す。雑誌や軍関連の書籍で良く見かける単語であり、いくつかの事件のキーワードになっている単語も多く混ざっていた。

『その間、我々もただ手をこまねいていたわけではない。各国首脳にサカタインダストリィの暴走が報告されると直ちに超国家間での情報共有、および暴走したサカタインダストリィの排除を目的として工作部隊が設立された。それが我々ノートゥングだ。2089年に何とかサカタインダストリィの私設部隊がハフマン島で動いているという情報を得てCISUに情報を流したが・・・我々の動きに気づいたサカタインダストリィは私設部隊を切り捨て、両国首脳をうまくあおり証拠のすべてを消しにかかった。』

『第二次ハフマン紛争が?でもあれはB型デバイスの実験場に使ったんじゃ・・・』

「祖国達の島」にあった一文を思い返しレジーナがいいかけると、カダールが制止する。

『理由はいくつも存在する。俺たちが知りうるのはその一部でしかない・・・ディートリッヒ中将も言っていただろ。戦争には数多くの思惑が絡む。違うか、シュナイダー。』

『そのとおりだ。と言っても一度つかんだ連中の動きは見逃すはずは無い。戦争中でも我々は謀略を交えて戦うこととなった。連中は我々の対レイブン兵器だったグリフィン級の情報を流しあるUSN部隊に破壊させ、逆に我々も幹部数名を抹殺した。ハフマンの魂にも情報を流し資金も提供して活動させ、サカタインダストリィの動きを牽制した・・・最もそれも罠だったがな。』

『・・・ハフマン島にかかりきりの間に世界中に拠点などを作らせたのか?連中は確か戦争捕虜も拉致出来た。建築物資や資金の横流しくらい簡単に出来ただろう。』

さすがに読みが鋭いな、とシュナイダーはカダールの戦略眼に舌を巻く。敵に廻る前に接触できたのが何よりの幸いであり説明を続けていく。

『そのとおりだ。サカタインダストリィが2091年に操業を停止すると連中は拠点をECの紛争地帯とアフリカに移した。ダミー会社もいつの間にか作っていたうえに、新たな無人兵器の開発も進めていたのだ。シュネッケの技術者を何名か引き抜き、紛争地帯に近い場所にプラントを作り実験を続けた。S型デバイスやA型デバイスと言った物や、衛星誘導の無人兵器システム、そして無線ネットワークから進入できるハッキング端末などをな。連中はグリムニルと表向きに名乗り、各国政府高官からの命令を遂行していった。A型デバイスも遠隔誘導システムもある程度実用化されているといっても連中がまとまった戦力を整えるには国家規模のプラントが不可欠だ。その協力を得るために大規模なテストを行おうとした。』

「・・・あの時、偽の命令書を持ってきてまで接収させたプラントもグリムニルの施設だったんです。チェチェン戦線に無人兵器を適度な数だけ送り込み、実験するための。」

リヴィエの説明になるほどな、とカダールはうなずく。これで偽造命令書の件も説明がつく。これほどの大規模な組織であれば紛争中の武装勢力に命令書を紛れ込ませるなど難しくも無いはずだ。

『そう、お前達のクーデターで予定が変わってしまった。ヴァンツァー製造施設を奪われ、連中の計画も停滞しているようだ。連中が拠点に入れた通信を傍受、ハッキングしてグリムニルの全容が見えてきた。今回の中南米の一件もそこから情報を得たものだ。そしてグリムニルのメンバーも何名かは判明した。ハフマン紛争中に暗殺したはずのモーガン・ベルナルドとメタルワーカープロジェクトからの古参技術者であるザーフトラ系科学者のナザール・バリジニコフ。』

『あいつだ・・・!あの、革命前に無人兵器のテストしてたあいつ!』

名前を聞いて、シエラはある人物の顔を思い浮かべる。カダールもあいつか、と納得してしまう。ゼニスSN型を食い止めるために協力を要請し、輸送列車を手配してくれた人物だ。

『堂々とホークス隊を叩きのめしたりして実戦テストしていたわけか・・・』

『貴重な情報だな・・・後は実働部隊の名前が挙がっていた。おそらく無人兵器の指揮官を務めるのに必要だと判断されたのだろう。ほとんどがハフマン島で軍の任務についていたところを拉致されている。もっとも、ほぼ全員が洗脳されているらしい。親友ですら容赦なく撃破したほどだ、連中に遭遇したら情け容赦などかけないほうがいい。』

了解、とカダールはうなずくとナミクが通信を入れてくる。

『それで、我々に何をしろと?』

『別にどうと言うことは無い。いつもどおり軍務に励んでもらいたいだけだ。EC軍総司令部を介して我々は命令を出す。ただ、我々の協力者を殺せと言う任務が下ったらこちらから連絡する。EC軍からの処分はどうにかするから、任務を受けないでもらいたい。難しい事では無いだろう?』

『・・・あぁ、だが・・・自分たちの手は汚さないわけか。』

ハーネルは信用ならんな、とぼやくがそうではないとシュナイダーは否定する。

『心外だな。我々も自前の戦力はある。だが各方面に展開するには不十分だ。一方のグリムニルはA型デバイスや遠隔誘導方式の無人兵器を活用してきている。手段を選んでいるほど余裕は無い。連中が無人兵器を売り始めたらなおさらだ。』

『・・・確かに急を要するな。』

『すでに無人兵器は稼動レベルにまで達している。後は実戦レベルに達するかどうかのテストだ。それを行うための大規模なテロ、もしくはクーデターを画策しているだろう。アゼルバイジャン近辺と、OCUアロルデシュでな。すでにOCUやEC、USNなどの高官を抱きこんで下準備をしているはずだ。』

『・・・連中、革命をそんな下劣な目的に使うつもりか!?』

ハーネルが怒りを見せる。ザーフトラ出身ということやアゼルバイジャンのクーデターを成功に導いたために不満を抱えている国民の気持ちを利用されるのは耐え難いようだ。レジーナも腹立たしくなってきたのか愚痴ってしまう。

『許せない相手だね、ったく・・・あたし等はそんな事に手を貸すために反乱を起こしたんじゃないのに。』

『それで、アゼルバイジャン近辺と言ったが分からないのか?』

冷静にカダールは話を進めるが、シュナイダーは分からんなと否定する。

『本当にストレラ工廠のプラントは放棄したようだ。中央アジア一帯の情報を集めているがその情報は皆無、CAUにならあるかと思ったがその代替施設も無い。だがチェチェン武装勢力もザーフトラ軍も無人兵器を使っている。それもチェチェン戦線に集中して、な。』

「つまり、アゼルバイジャン近辺に稼動中のプラントがあるわけですね・・・」

そこから、彼等に無人兵器を供給している拠点があるらしいがどこかはまだ分かっていないようだ。するとシエラが疑問符を抱く。

『相手、何かでかすぎない?グリムニルってさ・・・あちこちの紛争の黒幕みたいな感じじゃん?そーいうのが・・・』

『そうでもない。黒幕と言う言葉では語弊がある。連中はあくまでも行動を起こしたい連中に情報提供などのサポートをしているに過ぎない。計画を描いた奴は大抵が野心家の軍人や政治家、あるいは以前のアゼルバイジャンのような状況下にある民兵部隊だ。一介の科学者が紛争をコントロール出来たら今頃世界は破滅している。だが本格的にA型デバイスを量産されたら手がつけられなくなる。長期的に見ても悪い傾向だからな。』

『どうして?犠牲が出ない分いいんじゃないの?』

率直な疑問をシエラが投げかけるが、違うなとハーネルは首を振る。

『・・・俺たちは上官に恵まれているほうだが他国の将校はB型デバイスやレイブンのために紛争すらいとわない連中だ。そんな連中に無人兵器を持たせたら何をするかわからんだろう。証拠も残さない・・・そうなったら全世界でテロの応酬が始まってしまうな・・・』

『そのとおりだ。共同体崩壊と言う最悪のシナリオにつながりかねない。第二次ハフマン紛争、マデイラ危機(※3)でも相応の犠牲者が出ている。本格的な軍事衝突となれば何千万人もの死者が出るだろう。我々としてはなるべく共同体同士の戦争、代理戦争ですら避けたい所だ。共同体同士がいがみ合うような事はあってほしくない。』

最悪のシチュエーションだとカダールは思ってしまう。共同体同士が戦争をすれば大多数の犠牲者が出る。それが崩壊すればもっと多くの死者が出てしまうだろう。するとナミクが思った事を口にする。

『その割には革命とかを止めに走らないんだな・・・』

『OCUもUSNも真綿で首を絞めて無理やり加盟させた国家が多い。ザーフトラもそうだ。まっとうにやっているのはECくらいのものだ・・・不満を押さえつければ爆発するのは目に見えている。アゼルバイジャンも中南米も、CAUだってそれだから戦争を起こしたようなものだ。もっとも、我々のネットワークを使いUSN所属のメンバーは何とか食い止めようとしているが・・・おそらくは無駄だろう。』

『とめないのか?』

『我々は、祖国と天秤にかけた場合各自の判断に任せるように指示を出している。超国家の機関だからやむを得まい。もっともその間にグリムニルの情報はなるべくつかむように言っているがな。』

はぁ、とナミクは気のぬけたような返事をする。するとカダールは何か気になったのかある事をたずねる。

『どうして、シュトゥルムピングィンにリヴィエをとどまらせた?それと情報が漏洩した形跡は無いのか?』

『まず、情報漏洩だが誰かが意図的にやったのは間違いない。アゼルバイジャン司令部から武装勢力へ匿名の通信があった。』

『何!?』

やっぱり、国内に裏切り者がいるのかとカダールは確信する。もしかしたらゲオルギー元帥なのかもしれない、と思いつつその事を黙っているとシュナイダーが次の質問に答える。

『リヴィエをとどまらせたのは本人の希望もあるが、貴官らは事情を知っても協力してくれると思ったからだ。ロングリバース島に、キャニオンクロウが破壊したのとは別の施設があったがそこの移送された人物にシエラの名前が存在した。』

『つまり、デバイス関連の実験体にシエラが?』

『おそらくはな。もっとも我々が到着したとき半数はすでに殺されていた。残った半数は実験を受ける前の人物、何故シエラだけが脱出できて行方不明になったのかは分からんがな。とまぁ、我々の知る事実はこの程度だが・・・何か分かれば報告する。EC軍司令部に働きかけてデバイス関連の任務をまわしてもらおうと思ったが・・・迷惑なら忘れてくれても構わない。返事に関わらずリヴィエもそのままとどまらせる。』

シュナイダーの言葉を聞き、信用できるとカダールは実感する。話は壮大だが筋は通っているし、嘘だったら途中で見抜いてしまえばいいと思い承諾する。

『・・・いいだろう。信じても問題なさそうだ。』

『隊長、訳も分からない奴の事を信じるので?顔すら見せない奴を・・・』

ナミクがカダールに進言するが、いきなりモニターにシュナイダーの顔が写る。

『これで信用してくれるとありがたいのだがな。』

『ですが、隊長・・・』

ナミクがまだ食い下がるが、シエラはやめようよと言って笑みをこぼしながらナミクを説得する。

『やめやめ。隊長は何言っても聞かないよ?頑固なんだから。それより私が何されたのか、ちゃーんと連中から話聞かないとね。』

『そうだな・・・俺も賛成だ。どうせ国際的なテロリストなんだろ?相手取って損はないはずだ。』

アーヴィトも問題ない、というがハーネルは疑問符を投げかける。その表情は険しいものとなっている。

『・・・上官へはどう説明する。アゼルバイジャン軍が承認するかどうかも怪しい。』

『何、私は表向きEC統合軍司令部のオペレーターだ。作戦のオブザーバーと言う扱いでサポートする。それなら許可も必要ないだろう?』

『・・・なるほど、な。』

徹底している、とハーネルが実感するとレジーナが躊躇しているハーネルに声をかける。

『別に構わないだろ?どーせアイゼル首相の元でEC軍の一員として振り回されてるんだ。大して変わりゃあしないと思うけどね。』

『・・・なら構わん。ただ祖国・・・アゼルバイジャンに迷惑がかからないようにするのが絶対条件だ。ナミク、それでいいな?』

『・・・ああ。』

難色を示していたナミクもしぶしぶうなずき、カダールは胸をなでおろす。やはり部下の反対を押し切って行動するのは後味が悪い物であり、出来ることなら全員が納得する形がのぞましかったのだ。

『・・・部下も全員納得してくれたようだ。改めてよろしく頼む、シュナイダー。』

『こちらこそ。頼りにしているぞ?シュトゥルムピングィン。』

そこでシュナイダーは無線を切る。そのまま輸送ヘリはアゼルバイジャンへと向けて飛行し、クローズドミリタリーエリアへと向かっていく。

 

3/15 スムガイト クローズドミリタリーエリア基地内部休憩室 1641時

「疲れたなぁ・・・」

先日の作戦の疲れも取れず、昼間まで寝込んでいたシエラは一通りヴァンツァーの整備をしてから休憩室に向かう。ガストの損傷が酷いためある程度セットアップをする必要があったのだ。

それでもだるさは抜けず、自動販売機でホットココアを買いベンチに座るとちょうど良くカダールも入ってくる。コーヒーを片手に、シエラの隣に座る。

「隊長?どうしたの?」

「先日の報告をディートリッヒ中将にだけしておいた。元帥には情報漏洩の件も、ノートゥングの事も話していない・・・だが、いいわけを考えるのに疲れてな。」

なるほどね、とシエラはうなずきながらホットココアを飲む。リヴィエに見せられた映像の事を考えると、うかつに話さないほうがいいと判断したようだ。

「まぁ、ね・・・昨日の襲撃、確かに酷かったもん。こっちの動きを読んで動いてるとしか思えなかったし、乗客に見向きもしなかったよね。」

「・・・そうだな。」

戦闘記録をみて、カダールもシエラの言葉にうなずくほかなかった。シエラとアーヴィト、ナミクのみになったところを襲撃し不意打ちでナミクのガナドールを損傷させ、それから戦闘可能なアーヴィトとシエラ機を集中砲火したのだ。状況が分かっていなければ出来る事でもない。

「無事で良かった、シエラ。ヴァンツァーは破損してしまったが・・・」

「またガストを頼んだからいいよ。ホープライズ社製(※4)になったけど特に問題ないし。とりあえず武器腕は片方ウェアウルフ(※5)のにしてるけどね。」

「いや、俺が聞きたいのはそんなことじゃなくてな・・・」

そのままカダールはシエラの肩に手を回し、抱き寄せる。

「お前が無事で良かった・・・ってことだ。」

「・・・も、もう隊長ってば・・・」

思わずシエラは頬を紅潮させ、黙り込んでしまう。レジーナも休憩室で一服しようとしたが、割ってはいるのも無粋だと思いそのまま休憩室を通り過ぎて作戦会議室へと向かう。

するとなぜかハーネルとリヴィエも作戦会議室へと入ってくる。ハーネルは別段気に留める様子もなくいすに座る。

「どうしたんだい?2人そろって。」

「いえ、ハーネルさんにノートゥングの細かい説明を求められて・・・それで答えていたんですよ。」

なるほどねぇ、とレジーナはうなずくと率直な感想をぶちまける。

「正直、荒唐無稽もいいとこだけどねぇ・・・まぁ、あんたの話だから信じてるのさ、リヴィエ。」

「・・・確かにそうそう信じられる話ではないな。だが・・・ありえないと断定は出来ない。証拠も数多くある。」

ハーネルは話半分には聞いているが、一応の筋が通っているために納得しているようだ。

「それより・・・気にかかるのが情報漏洩だ。誰が武装勢力に情報を流して旅客機を撃墜させ、俺たちを襲撃するよう仕組んだ。誰がやった?」

「・・・誰かねぇ。この場合・・・あたしが怪しいのは分かってるけど違うよ。そんな高度なまねはできやしない。」

そうですね、とリヴィエもレジーナ犯人説を否定する。

「誰からも怪しまれるような行動なんてしませんし、貴方はハッキングとか電子機器関連に関しては本島に弱そうですからね。葉巻も大量に吸いますし。」

「何で関係あるんだい?葉巻と・・・」

「身元照会可能な証拠がたっぷり残りますからね。葉巻なら。」

唾液についたDNAから個人を特定することが可能であり、証拠も残りやすいため葉巻をすうエージェントなどそうそういない。ましてレジーナのようにヴァンツァーに灰皿をつけるような奴はいないだろう。

「・・・となると・・・」

「やめましょうよ、2人とも・・・憶測で誰が裏切り物か、なんていえば隊の士気に関わります。何かあったときに証拠を逃さないようにするのは大事ですけど、今から誰だ誰だと疑っていては・・・」

そうだな、とハーネルは納得し首を縦に振る。レジーナもうなずくが、もしかしたらと思ってたずねてみる。

「何か証拠はないのかい?そこまでいうんだったら。」

「今の所は何もありません・・・残念ながら。とりあえず、内偵はして見ますが期待しないでください。」

わかったよ、とレジーナも納得すると葉巻を吸い携帯灰皿に灰を突っ込む。リヴィエはそのままハーネルを伴って退室してしまう。

「・・・ったく、仲間を裏切るなんてね。」

もし見つけたら葉巻でも押し付けてやろうか、と思いながらレジーナは一服する。

 

「・・・失敗に終りました。シュトゥルムピングィンの2名はぴんぴんしています。」

『まぁいい、そうでなくてはマテリアルにふさわしくない。しかし本当に使えん連中だ。ところで次の計画・・・異存はないな?』

「もちろんです。」

『ならいい・・・来年を楽しみにしておけ。』

 

続く

 

 

 

 

(※1)

DA社製APC。以下解説。

ディアブル・アビオニクス社が開発した装甲車。8輪のタイヤで走行するタイプであり20mm機銃を標準装備する。武装バリエーションは豊富でジャミングタイプや輸送用、対ヴァンツァー特化や機動砲システムなどがある。
同装甲車のみで編成された旅団も存在し、コンパクトながら緊急展開性に優れている。スリングヘリ程度なら降下しても大丈夫であり空挺用のアドオンを使用する事である程度の高度からの降下作戦も可能となっている。空挺作戦も行えるヴァンツァーに対抗した汎用性の高さと、タイヤによる機動力の高さを売りにしている。
ただしAPCのため装甲は少々薄く、1発の被弾が命取りになりやすい。USNの各国軍で使用されており中には機動砲システムを戦車代わりに導入した国家もある。

(※2)
マセルインダストリー製VTOL輸送機。以下解説。

これまでマセルインダストリーが培ってきたVTOL技術を生かした輸送機。2078年に開発され分厚いデルタ翼にリフトファンを収納。機尾に推力偏向型のエンジンを搭載しており不整地や短い滑走路での離着陸が可能となっている。アフリカでは長引く内戦などにインフラ整備の遅れがあり、滑走路が整備されていないところも多いため必要となった。姿勢制御のため操縦席後方にもリフトファンを設置している。
基本的にヴァンツァー4機(貨物150t近く)を搭載可能となっている。機体の構造上ハッチを機首や機尾に配置する事が出来ず、両サイドのハッチを介して貨物を出し入れする。軍用輸送機としてアフリカ連合全域に配備され、OCUなどにも輸出されている。d型は2091年改修型でアビオニクス類を一新し新型のフレアーを搭載したタイプ。

(※3)
4thの事件の総称。マデイラ島での軍事作戦が世界に与えた影響が大きいためこのように総称。出展元は天網より。

(※4)
2097年に生産終了とほざいてやがったので仕方なくホープライズ社製のガストを。あれほどの名機を生産中止する首脳部のアホさはすくいがたい+ガストの需要はまだあるだろ、ってことでこちらに。ちなみにディアブル・アビオニクス社は2013年にガストの最新型の生産を再開した。

(※5)
ホープライズ社製中量前衛機。以下解説。

これまで大型機動兵器などを開発したりディアブル・アビオニクス社の機体を生産してきたホープライズ社が開発した初のフルセットヴァンツァー。ガストの設計を参考にしてフレームや各部分の耐久性を強化。武装に武器腕の76mmショットガンを採用した。このショットガンはブラックストーンの銃身を延長した改良型である。
新型のアクチュエイターとエンジンでガストと同等の機動力を発揮し、防御性能はある程度妥協している。その分コストパフォーマンスは良くガストよりもより近距離での戦闘を可能としている。機械的な信頼性にも優れ、アクチュエイターも頑丈さを売りにした改良型を使い交換の頻度を減らし、メンテナンス性を向上させている。しかしショットガンのため中距離戦闘には不向きであり実戦部隊はガストの腕を片腕に搭載した物を注文した。後にウェアウルフのデザインや技術を取り入れた28mm武器腕も開発された。
それなりに売れ行きが良かったが中南米連合が大規模に購入。ホープライズ社の支社はさも当然のように武器を供給したためUSN軍兵士にとっては「悪役」のイメージが強い。

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