Front mission Brockede

Mission-23 Crash site

 

2097 3/14 0941時 アルジェリア領空 ルフトフォーゲル571便機内

「・・・ふぅ。」

旅客機のビジネスクラスで、ゆったりとした座席に座りリヴィエはコーヒーを飲みながら窓の外を見る。一面の青空であり目的地のトルコまではもうすぐである。トルコから飛行機を乗り継いでバクーに向かう予定で、後3時間もすれば懐かしいアゼルバイジャンに到着する。

グリムニルの掃討任務で疲労はピークに達していたが、アゼルバイジャンにたどり着けばゆっくり休めるだろうと思いリヴィエは水を飲みながら到着時刻を待つ。

「懐かしい面々にようやく会えます・・・がんばっているようですしね。」

掃討任務をしている間もリヴィエは欠かさずシュトゥルムピングィンの活躍を聞いていた。政府軍残党の掃討任務や武装勢力から民間人を護衛したり、2097年はじめに発生したECアイルランドの大規模クーデターも阻止する事ができた。

だからこそ武勇伝を聞きたいと思っているのだが・・・いきなり機内に衝撃が走る。リヴィエが窓の外を見ると主翼っが炎を吹き上げている。出火元はエンジンのようだ。

『こちらルフトフォーゲル571便、緊急事態だ!何者かの攻撃を受けて機体が損傷した!主翼のエンジンから出火、爆発の衝撃で主翼から燃料が漏れている!第1エンジンも停止、緊急着陸する!』

「・・・!」

リヴィエは小型のヘッドセットでパイロットの無線を傍受している。同時に酸素マスクが天井から吊り下げられてきたためリヴィエはすぐに装着する。

「お客様に申し上げます!当機は緊急着陸を行います!どうか落ち着いてください!酸素マスクを取り付けて、頭を下げてください!」

客室添乗員の指示通りに乗客は頭を下げて着陸の衝撃に備える。リヴィエも例外ではないが、首を振って舌打ちしてしまう。

「・・・民間人まで巻き込むなんて、礼儀というものを知らないんですか・・・!」

ルフトフォーゲル571便は機首を一気に下げて、アルジェリアの砂漠へと速度を上げながら降下してゆく。

 

 

1147時 スムガイト市街地

「こんなもんでいいかな?」

「・・・で、荷物もちは俺か・・・」

リヴィエの歓迎会のためにシエラは大量の食材やお酒を買い込み、帰路についている。もちろん軽い荷物だけもって荷物もちにアーヴィトとハーネルを呼んだようだ。当然だがハーネルは愚痴ってしまう。

「だってレジーナと隊長は内装担当なんだもの。隊員も協力してくれてるし・・・」

「貴様のお気楽さがうらやましいな・・・知らないのか?」

「何を?」

両手にレジ袋を4つほどさげながらハーネルはまことしやかに噂されていることを口にする。

「・・・リヴィエが内通者だという噂だ。ホークス隊に情報を流したりザーフトラ軍の陰謀にかかわっていたりと。そんな状況下でお前も隊長も歓迎会を開こうなどと・・・」

「嘘じゃないか?いやたとえ本当でも裏切りなんてしないって。リヴィエは何考えてるかわからないけど、そんな腹黒い奴には見えないけどなぁ。」

気楽にアーヴィトが答え、そうだよとシエラも明るい様子で相槌をうつ。

「・・・お前といいシエラといい隊長といい人を信じすぎる。それが危ういと言うんだ。不可解な行動をリヴィエがとっているのは事実だ。」

「うーん・・・でも、帰ってきたら話してくれるよ。多分だけどね。」

シエラの答えに楽観的過ぎる、とハーネルは愚痴をこぼす。だが本人に問い詰めなければ何もわからないのも事実だ。気まずいと思ったのかアーヴィトが話題を変える。

「そ、そういえば聞いたか?連続殺人の噂。地元の名士やアゼルバイジャン警察の古株とかが次々に殺されてるって話で・・・怖いよな。」

「犯人はヴァンツァーを使ってるってあれ?怖いなぁ・・・」

昨年あたりからヴァンツァーによる連続殺人事件が横行しており、黒い噂の耐えない地元の名士や警察職員、政府関係者などが次々に暗殺されているのだ。犯人は不明だが政府軍の残党ではないかと噂されている。そのためにアゼルバイジャン軍で政府軍の残党狩りは徹底して行われ、シュトゥルムピングィンも出撃している。

それでも政府軍残党は次々に現れ、実際に各地に被害を及ぼしている。物資を略奪したりとやっていることが山賊まがいになっているのだが。

「・・・怪しいな。俺達で相当数のヴァンツァーを撃破しているのに次から次へと沸いてくる。地元の協力を得られない状況下で何故行動できる?」

「ザーフトラ軍かな?」

「バカを言うな。96年の騒ぎもあるしバチツキー大統領はそういう真似をするとは思えん。ECとなるべくは衝突を回避しようと動いているからな・・・裏で何をやっているかはわからんが。」

ハーネルはそれはありえない、と首を振る。バチツキー大統領は資源輸出などの陰謀にかかわった関係者を処分し自身も今期の大統領は責任を持つが再選はしないと公約し責任をとる形となった。そこまでする人物だから裏工作などしないだろうと思っているようだ。

「とにかく大規模な勢力の支援が無いと無理だな。昔の暗殺教団みたいな大規模な組織が無いとヴァンツァーを暗殺に使うなんてできそうにない。」

「・・・だとしたらアゼルバイジャン国内の誰かが犯人か?誰が・・・」

ハーネルはいろいろと考えるが、シエラはひとつだけ心当たりがあった。リヴィエが見せてくれた映像が真実ならありえるかもしれない、と思ってしまう。言葉をとどめおくこともできず、シエラはぼそりとつぶやく。

「・・・ゲオルギー元帥とか・・・」

「元帥が?シエラもありえないこと言うなよ。あんないい奴を疑う余地なんてないじゃないか。?」

アーヴィトが一笑に付してしまい、シエラもそうだよねと納得してしまう。部下を気遣ってくれる上官に限ってそんなに悪いことをしているはずがない。少なくとも今の元帥を見る限りでは裏切ったりするようなそぶりなどない。

「・・・もう裏切りとか疑念とかそういう話は抜きだ。どうこう言うなら自分で確かめろ。」

「はいはい。」

いやになったのかハーネルは話を無理やりに終わらせる。意図を察したのか、シエラとアーヴィトもうなずきながら肌寒い風が吹く市街地を歩き続ける。

5分ほど歩いていると、いきなりカダールが無線を入れてくる。ヘッドセットでシエラが応答すると驚愕した様子で無線に応答する。ただならぬ雰囲気に機がついたアーヴィトはシエラの顔を覗き込む。

「どうしたんだ、シエラ?」

「ルフトフォーゲル571便・・・リヴィエの乗ってた旅客機なんだ。撃墜されたって・・・」

「撃墜!?」

アーヴィトが大声を上げて驚いてしまう。いまだに状況を飲み込めないのかシエラは呆然としているがハーネルは無線でカダールに通信を入れる。

「隊長、詳細は?」

『アルジェリア領空で対空ミサイルを受けて撃墜されたらしい。武装勢力の仕業らしいが詳細は不明、旅客機は現在行方不明だ。』

「・・・そうか。」

『今元帥と救出作戦を立案している最中だ。お前達もすぐ戻ってくれ!』

了解、と答えるとシエラは真っ先に走り出す。リヴィエがどうなっているのかやっぱり気になってしまったようだ。ハーネルも荷物を抱えたまま全力で駆け出す。

「お、おい!ちょっと待ってって・・・!」

重い荷物を持っているアーヴィトは走るのもつらく、息を切らせながら彼らの後に続いてゆく。

 

スムガイト クローズドミリタリーエリア 作戦会議室 同時刻

「首相から、アフリカ連合(※1)の協力を取り付けたと連絡が入った。シュトゥルムピングィンも現地武装勢力から乗客を護衛するという名目で派遣ができる。」

「よかった・・・」

カダールは対外折衝がうまくいったことに胸をなでおろす。旅客機の墜落地点はサハラ砂漠の北西部でありそこにガンシップで乗り込んで探索。万一敵軍がいた場合実力で排除することも許可されている。

本来なら他国の軍、それも特殊部隊が侵入することなど認められないが武装勢力が数多くうろつくサハラ砂漠という状況下であり正規軍だけでは手が足りないのも実情だ。武装勢力は砂丘に身を隠し奇襲してくるためアフリカ連合の正規軍でも苦戦は免れないという。

「喜ぶのは救出してからにしてもらうぞ、中佐。必ずリヴィエを救出してほしい。重要機密を知っているというのは建前だ。開放から健闘を見せている同志を見捨てては軍人とは呼べん。」

「わかっています、元帥・・・必ずリヴィエを奪還して来ます。」

ゲオルギー元帥が檄を飛ばし、カダールはうなずくとそのまま格納庫へと向かう。途中で部下に格納庫に集結しヴァンツァーに乗り込むように指示をする。廊下を駆け抜け、カダールがはしごを駆け上がってストームに乗り込むと兵員を確認する。

「こちらカダール、出撃準備を完了した。お前達は大丈夫か?」

『シエラ了解・・・け、けど走るのはやばいよ・・・』

息を切らせた様子でシエラはガストの操縦席から応答する。しばらくするとレジーナとハーネルが格納庫に入りそのまま機体に乗り込む。

『ハーネル、問題なしだ。』

『準備完了したけど・・・今回もアーヴィトを呼ぶのかい?』

レジーナが問いかけると、もう呼んだとカダールはうなずく。リヴィエがいない分熟練の兵員を第1小隊に編入させていたが大事な作戦の時にはアーヴィトを混ぜている。口調は軽いが人物としても、戦力としても信頼できる人物だ。

しばらくしてアーヴィトとナミクがそれぞれの機体へと乗り込む。そして無線で連絡を入れるとカダールは了解、と応答しディスプレイを開く。ゲオルギー元帥が作戦司令室から概要を説明し始める。

『作戦を説明する。アルジェリア領ハシメサウド南西20km付近に旅客機が墜落した。我が部隊はこの機体の捜索に当たる。万一武装勢力と交戦状態に入った場合は実力での排除を許可する。以上だ。リヴィエをなんとしても救い出せ。失敗は許さんぞ。』

「了解!」

カダールが十分な覇気を見せながら応答する。他の隊員も元気よく応答すると格納庫から出てヘリポートに駐機している輸送ヘリへとヴァンツァーを乗り込ませる。

 

2133時 アルジェリア南部

『・・・アルジェリア軍は何をやっているんだ?9時間くらいすれば見つけられそうなものだが・・・』

月光が輝く紺色の空の下、ナミクが輸送ヘリに格納されているガナドールの操縦席から疑問符を浮かべる。旅客機は衛星からでも確認できそうなものだがいまだに発見すらできていない様子だ。

『今武装勢力と鉢合わせになって正規軍は苦戦しているようだ・・・調査部隊を送り込むにも明日までかかるという。』

ハーネルは苛立ちを隠せない様子でアルジェリア軍の対応を愚痴る。自国の武装勢力を野放しにしておくからこうなるんだという苛立ちからか声を強めている。するとナミクが疑問符を抱く。

『・・・リヴィエを狙って撃墜した、なんてことは無いよな?』

『どういう意味さ、ナミク。』

意味深な発言にシエラがたずね返すと、ナミクは深刻そうな表情をしたまま答える。

『リヴィエを抹殺するために武装勢力に輸送機だと偽の情報を流し撃墜させたのかもしれない。たとえ胴体着陸で助かったとしても、武装勢力が料理してくれるだろう。』

『ナミク、不吉なこと言うなよ・・・んなことあっていいわけないだろ?民間人300名以上を巻き添えにするなんて普通ありえないじゃないか。』

アーヴィトは背筋の凍る思いをしながら応答する。もしかしたら事実なんじゃないか、という疑念も捨てきれないのだ。レジーナは口調を強めて否定する。

『冗談じゃない、リヴィエのせいで撃墜されたとでも言いたいのかい!?』

『・・・しかし武装勢力が民間機を狙うなんてそんなに無い。軍用輸送機なら儲けも大きいし輸送物資とか、まれに金塊も入っている事もある。だが民間機は撃墜されれば即刻国連軍から討伐対象としてマークされるし、貴重なミサイルを使うほど金になるものは無いはずだ。』

冷徹にハーネルは意見を述べるが、カダールはその状況にいらだったのか声を低くして全員を制止する。

「お前らくだらない話はそこまでにしろ・・・いいな?誰を狙って撃墜されようが撃墜した奴が悪い。忘れるな。」

『・・・了解。』

単純な真理をカダールに言われ、ハーネルは短く応答する。他の面々も黙らざるを得ずシエラはやれやれと思ってため息をつく。いつからこれほどまで活躍した仲間の愚痴を平然と言えるようになったのかと思うと、悔しさもこみ上げてきたのだ。

『武装勢力の連中、さっさととっちめようよ。きっと旅客機の乗客に何かするよ、絶対。』

『そうじゃないことを祈ろう。』

アーヴィトが悲観的な意見を打ち消そうとすると、パイロットが無線を入れてくる。

『レーダーに旅客機を確認、近くで下ろします!』

「了解、頼むぞ。」

カダールが指示を出すとACH59は旅客機へと急接近する。旅客機はかろうじて原型をとどめており機体の外で乗客が焚き火をして救援を待ち続けているのがはっきりと見える。まだ武装勢力は到着していないようだが、焚き火の光を発見すれば武装勢力が向かってくるはずだ。

砂塵を巻き上げながらヘリが着陸すると、すぐにシュトゥルムピングィンの隊員はACH59から降りる。するとルフトフォーゲル571便の機長が無線で連絡をよこしてくる。

『こちらルフトフォーゲル571便の機長だ。正規軍のようだが・・・どこの所属だ?』

「ECアゼルバイジャン陸軍だ。乗客の安否を知りたい。」

カダールが応答すると、胸をなでおろした様子で機長が状況を説明する。

『よかった・・・機体は何とか胴体着陸に成功。負傷者を何十名か出したが無事着陸に成功した。乗客は全員無事だが、現在の所全員の確認は取れていない。後で乗客名簿ともう一度照合する。』

「わかった。それより焚き火を消してくれ。武装勢力に気づかれる恐れがある。」

『了解、すぐ消すように・・・』

機長がそういいかけたとたん、レジーナがレーダーを確認して声を張り上げる。

『手遅れみたいだね、隊長・・・所属不明ヴァンツァーが多数接近中!結構近いよ!』

『・・・もう来たか。こんな場所で死ぬわけにも、乗客を死なせるわけにもいかんな。』

冷静にハーネルが答える。武装勢力が襲ってくることなど分かりきっていたことであり今更奇襲を受けても驚く気配は無い。武装勢力の陣容は旧型であるハスキーやゲインなどが主戦力でハスキーにガストの武器腕を搭載した機体も多い。

カダールが敵機を視認すると敵機もレーダー照射を仕掛けてくる。すぐにカダールは武装のセーフティを解除、ホーネットを発砲しながら指示を出す。

「各機戦闘態勢をとれ!武装勢力を排除する、容赦をするな!」

『了解!』

ガストの武器腕を搭載した、市街地迷彩のハスキーが砂丘を乗り越えて20mm機銃を連射してくる。シールドでカダールは防ぎながらもう1発ホーネットを発砲。ハスキーの右腕に砲弾が命中し予備弾薬に誘爆し一瞬で炎上してしまう。

しかし、砂丘を越えて武装勢力は次々に突撃してくる。レジーナはダブルコメットで砂丘を超えてきたヴァンツァーを狙撃するものの、敵軍は相当数のヴァンツァーで押し寄せてくる。精密射撃で1機ずつ撃破していってもキリがない。

『かかれ!輸送機から奪えるだけ奪え!』

『おい、こっちは旅客機なんだぞ!略奪をやめろ!』

アーヴィトが必死に呼びかけるが武装勢力は欲に目がくらんで我先にと旅客機に突撃していく。仕方ないと思いアーヴィトはグレイブを発砲。武装勢力を迎撃する。

32mm銃弾が突進してくるテンダスに直撃、操縦席を射抜かれ沈黙してしまう。さすがに武装勢力だけあって塗装は統一されてはいない。それほどの技量も無いが、数で押し寄せてくるのは厄介だ。

『バカは死ななきゃ直らないのさ、アーヴィト!無駄口たたく前にやっちまうよ!』

檄を飛ばしながらレジーナはダブルコメットを発砲する。98mm砲弾が砂丘を乗り越えてくるゲインの胴体を貫通し、爆発する。シュトゥルムピングィンはミサイルやバズーカで遠距離から武装勢力を迎撃するがそれでも武装勢力のヴァンツァーはとどまることなく押し寄せてくる。

『なんでこんなに狙ってるの!ここに軍事機密なんてないんだよ!金塊なんて絶対入ってないんだから!』

武装勢力に無線でどなりながらシエラは20mm機銃を連射し続ける。もちろん敵軍には聞こえていないが、それでも警告して何名か撤収してくれればいいと思っているのだ。

『シエラ、あいつらにアゼル語が分かるとは思わないが・・・』

『ナミクはだまってて!』

もちろんナミクの言うとおりアフリカの武装勢力に母国語であるアゼル語が通用するはずは無い。だがシエラはアールアッソーCも交えて銃撃しハスキーを一瞬でボロボロにしてしまう。ナミクもやれやれと思いながらミサイルを発射。白煙を引きながらミサイルはハスキーに直撃、爆発を起こす。

すると新手の武装勢力が南の平地から到来する。フェザントやミュートスなどを交えたヴァンツァーの2個小隊であり旅客機に接近してくる。ハーネルはその陣容を見て驚いてしまう。

『増援を確認・・・革命の時に居た無人機か!?』

『どうしてこんなところに!?』

シエラも驚きながら、押し寄せてくる武装勢力のヴァンツァーを片っ端から迎撃する。40mm銃弾が迫りくるハスキーに直撃し無数の穴をあけられたハスキーは金属音を立てながら砂漠に倒れる。

カダールやレジーナは優先的にゲインを狙い、遠距離からバズーカやライフルで狙撃する。砲弾が正確にゲインの胴体に直撃し、爆発を引き起こす。ナミクが援護射撃を行い、ミサイルで前進を阻むと武装勢力はかなわないと見たのか撤収する。

『あっちの武装勢力は撤収したよ!』

『・・・あの程度問題にもならん。』

シエラの報告を聞いてもハーネルは険しい表情のまま敵軍を見据え続ける。所属不明の無人機は一様に砂漠迷彩を施され、統率が取れた動きをしている。アフリカの正規軍ではないらしい。

シャカールがローラーダッシュを仕掛けながらドーンスターを構え突撃する。シエラがすぐに反応し20mm機銃を発射。ハーネルもジリーノを発射し進撃を阻もうとするがシャカールは弾幕を突っ切ってロッドをジラーニめがけ振りかざす。

『そんな程度か・・・』

ハーネルはアゴーニで受け流すと、至近距離からジリーノを発砲。シャカールを吹き飛ばす。すぐにアーヴィトもグレイブを発砲し弾幕を浴びせかけるが、軽々と銃弾を回避してミュートスが距離を詰めてくる。

そしてオーデンを発砲。近距離でガストが散弾を浴びて怯んでしまう。その隙をハーネルがカバーし、アゴーニでミュートスの足元から救い上げて転倒させる。

『ふぅ、さんきゅ!』

『気にするな。』

転倒した隙にシエラは20mm機銃を発砲。起き上がる前にミュートスに大量の銃弾を浴びせ沈黙させる。その間にもアルカードやミュートスが接近しながらマシンガンを発砲するがアルカードが98mm砲弾に貫かれ爆発する。

残ったミュートスはレオスタンを連射するがシエラとハーネルが弾幕を浴びせて撃破、ミュートスは砂地に倒れこむ。それをフェザントがローラーダッシュで飛び越えながら接近。ダブルネイルで殴りかかってくるがハーネルはそれをアゴーニで受け止める。

『援護する!』

ナミクが武器腕からミサイルを発射。8発のミサイルがフェザントに直撃する。ミサイルはフェザントの装甲を突き破り、爆発してしまう。

その後ろから武器腕を搭載したレイブンが出現する。数は1機だけだがカダールはあのときの悪夢を思い返してしまう。ジュリアスが死んだときも奴が相手だったのだから、思い出すなと言うほうが難しいが。

「・・・」

『隊長、あいつで最後だよ!私達で迎撃しようよ、ね?』

シエラにせかされ、分かったとカダールは応答する。レイブンはシュトゥルムピングィンめがけローラーダッシュを仕掛け、57mm速射砲を発射しながら接近してくる。

すかさずシエラも前に出て20mm機銃の射程から両腕のマシンガンとアールアッソーCを同時に発射し猛烈な弾幕を浴びせかける。何百発という弾丸を浴びせかけられている間にカダールがホーネットを発砲。

レイブンの頭部に10cm砲弾が直撃し、一撃で吹き飛ばしてしまう。それでも予備センサーで策敵しレイブンは57mm速射砲を連射、ガストに直撃弾を与える。

『ちょ、ちょっとこっち向かないでよ!』

『・・・な、何故・・・?』

シエラの無線に反応したのか、一瞬だけレイブンの動きが止まる。一瞬だけカダールはシエラに良く似た声が聞えたが気のせいだと判断しプラヴァーを発射。

ミサイルがレイブンの胴体に直撃し、体勢を大きく崩したところにレジーナとナミクも重火器による一斉射撃を浴びせレイブンは爆発、炎上してしまう。そのとき、かすかにだが悲鳴が聞えたような気がしたのだ。

『・・・シエラの声が聞えなかったか?隊長。』

「俺も聞いた。何があったんだ・・・?」

戸惑った様子でハーネルが無線をいれ、カダールもうなずいてしまう。悲鳴は確かにシエラにそっくりで、聞き間違えるほどだった。だがシエラは違うよ、と否定する。

『そんなわけ無いよ、何でレイブンが撃破されて私が悲鳴を上げるの?』

『だよなぁ・・・気のせいじゃないのか?』

アーヴィトも違うだろ、と否定するとナミクが目を丸くして、驚いた様子で報告する。

『今機長から聞いたんだが・・・リヴィエは北西部に徒歩で逃げたらしい・・・!』

「何!?本当なのか!?」

そんなばかな、とカダールが驚くと機長が無線機でカダールに通信を入れる。

『本当にそうなんだ、先ほど乗客の1人がそれらしい女性が北東に逃げて行くのを確認した。』

「だとしたらどうしてだ?リヴィエは何故逃げる必要があった?機長、乗客に逃げるよう指示していないんだな?」

『そうだ。だが彼女は制止を振り切って逃げ出したのだから止めようも無い。探しに行くのも危険だからな・・・』

カダールは表情を硬くしながら、部隊に通達を出す。

「全機、北東部に向かえ。それとアーヴィトはアフリカ軍に旅客機の座標を転送しろ。すぐ来るはずだ。」

『隊長、それでは乗客が武装勢力に襲撃される可能性も・・・!アフリカ軍が来るまでここで待機しましょう!?』

アーヴィトが反論するが、声を荒げてカダールはアーヴィトの意見を一蹴する。

「リヴィエの救出が最優先だ、いいな!?」

『先ほどの武装勢力が攻めてきたらどうするんですか、隊長!この乗客は武器を持っていないんだ、万一来たら・・・!』

必死にアーヴィトは残るべきだと主張する。だがハーネルが横から口を挟む。

『忘れたのか?俺たちの任務はリヴィエの救出だ。旅客機の乗客はアフリカ連合軍に任せるべきことだ。』

『そんなのおかしいよ、ハーネル!私達がいない間に皆殺しにされたらどう責任を取るつもり!?』

シエラも残るべきだと主張する。旅客機の乗客を見捨ててどこかに行くなど考えられないことだからだ。ここで見捨てたら当初の目的である旅客機の乗客を護衛するという任務も果たせない。すろとナミクが提案する。

『だったら・・・隊を分けてはどうです?武装勢力などたいした相手でもないはずです。』

「・・・それでいいな。ナミクは残って指揮を取れ。アーヴィトとシエラも残って・・・俺とハーネル、レジーナで行く。レジーナは問題ないか?」

『・・・あぁ。問題ないね。』

それだけいうと、カダールはレジーナとハーネルを引きつれ北東へと向かう。シエラ達を残したのは少し不安も残ってしまうが、リヴィエの救出が最優先だと自分に言い聞かせて進んでいく。レジーナは疑問符を浮かべてたずねる。

『隊長、気負いすぎじゃないのかい?そりゃあリヴィエも早く救出してやりたいのは分かるけどねぇ・・・』

「そんなことは解っている。だが・・・嫌な予感がしてな。リヴィエが逃げた事も気にかかるが先ほどディートリッヒ中将から連絡が会った。「USN軍がアルジェリアで機体を捜索していたがいきなり引き返した」とな。」

『まさか・・・!』

レジーナはそこまで聞いて、すぐにカダールに進言する。

『そのUSN軍部隊を追えばリヴィエの居所がつかめるかもしれないよ、隊長。行軍中に説明するけどリヴィエはUSNに追われる理由があるんだ。』

『・・・もし間違えたらUSNとECの関係に再び亀裂を入れかねないがな・・・』

ハーネルは万一のことがあってはいけないと思い釘を刺す。だがカダールの意思は変わらないようだ。

「部下を見捨てて上官が務まるわけ無いだろう・・・行くぞ。後悔するなら行動を起こしてするべきだ。」

『そういうと思っていた・・・隊長、すでにヘリは呼んでいる。USN軍の進路に先回りすればリヴィエも救出できる。』

ACH59が彼らの目の前に着陸すると、そのまま乗り込んでカダール達は北西へと向かう。USN軍の部隊がリヴィエを拉致したなら、彼らの進路に先回りして救出すれば良い話だ。

はやる気持ちを抑えながら、カダールは冷静に作戦を考え始める。と言ってもUSN軍の編成が分からないためそれほど綿密に作戦は立てられないのだが。

 

『シエラと言ったか?』

「えぇ、そうだけど?」

待機しているシエラに旅客機の機長が無線を入れてくる。

『残ってくれて感謝する。このあたりの武装勢力は正規軍も手を焼いているそうだ。アフリカ連合軍も来るのに手間取っているらしい・・・』

「いいニュースありがとね、機長。」

あんまりいい報告ではないな、とシエラは感じてしまう。アフリカ連合軍は武装勢力などを完全に制御で来ていない状況にある。宗教や民族の違いで幾度となく争ってきた面々を無理やり連合体の枠に収めようと言うことは出来ないし、シエラも武装勢力に若干同情している。

と言っても民間人から略奪したり、虐殺を行うような連中を好き勝手させたくは無いしそういう連中に同情の余地は無い。するとアーヴィトがふと弱音を吐く。

『・・・守りきれんのかな。俺達・・・』

「何言ってるの・・・守るの。それが私達の任務じゃない。わかる?」

だよな、とアーヴィトがうなずく。シエラはカダールについていけば良かったかもしれないと思いながらも、旅客機の乗客を守る名目で来た以上、守る必要があると思っている。

一応建前ではあるが、その建前をしっかりと守らなければ自分たちの信用も地に落ちてしまう。そう思っているとナミクが連絡を入れてくる。

『敵機を確認した、武装勢力だ!これより応戦・・・』

そこまでナミクが言いかけた途端、武装勢力のツィカーデがズィーガーでガナドールを狙撃する。88mm徹甲弾が脚部に直撃。もう1発はバックパックに直撃しガナドールが行動不能になる。

「アーヴィト、大丈夫!?」

『戦闘続行不能だ・・・すまない、こんなときに・・・』

煙を噴き上げるガナドールをシエラは一瞥するが、視界に武装勢力のヴァンツァーが入ってくる。先の戦闘と同じくらいの数を引き連れてきたようだ。しかも前後から挟み撃ちするつもりらしい。

『ナミクがこんなときに・・・!』

「アーヴィト、後ろに回って!こうなったらバックトゥバックやっちゃおう!」

『ちょっと待てシエラ、それは・・・!』

「いいから!」

アーヴィトはシエラに何か言おうとしたが、シエラは映画でみたワンシーンを思い浮かべたのかすぐにシケイダ2の後ろにつく。そして手当たり次第に突進してくるヴァンツァーを迎撃する。

「ほら、アーヴィトも射撃して!アフリカ連合軍だってすぐ来るから・・・それに、旅客機の乗客を守るんでしょ!?」

『あ・・・あぁ!』

挟み撃ちをバックトゥバックでしのぐというのは良く映画で見られる光景だが、アーヴィトはまさか自分がそんな状況に陥るとは思わなかったようだ。だがシエラは片っ端から20mm機銃とアールアッソーCを浴びせ的確に迎撃して行く。

アーヴィトもアフリカ連合軍に対しての航空支援を要請しながらグレイブとトゥームで迎撃する。ハスキーに直撃弾を与え武器腕を破損させ、その後ろから迫るジービュの胴体に銃弾を貫通させる。

操縦席を貫通したのかジービュは沈黙、その後ろからも次々とヴァンツァーが迫ってくる。シエラは喜々としながら弾膜を浴びせてヴァンツァーを迎撃していく。遠距離でライフルを構えるツィカーデをアールアッソーCで射抜き、爆発させてしまう。

『まだ来る・・・!』

「何とかしようよ・・・!逃げたらダメ、アーヴィト!」

必死にシエラが叱咤激励しながら攻撃を続けるが、それでも武装勢力のヴァンツァーはひるむことなく進撃を続け、2機のヴァンツァーは次第に追い詰められてゆく。

 

続く

 

 

(※1)
アフリカに関してはマルチエンディングのフロントミッション・オルタナティブがあるがその後でどのエンディングが正史かまったく描かれて居ないので本編ではとりあえずアフリカ連合が発足しまとまっているものとする。ただし管区についてはそれ以前の連合の名前を拝借していると言う設定。

inserted by FC2 system