Front misson Brockade

Misson-16 Rescue duty

 

2/22 1100時 アリャート仮設基地

「・・・よし、これだ・・・!」

目をこすり、ぐっとこぶしを握り締めてジュリアスは歓喜に打ち震える。パスワードを解除し、ようやくお目当ての情報を見つけた様子だ。

「ジュリアスさん、見つかりましたか?」

「あぁ、悪いな。」

USNアメリカから取り寄せた2lペットボトル入りコーラをジュリアスは受け取り、キャップをあけてがぶ飲みする。1/8ほど飲み終えたところで、ディスプレイをリヴィエに見せる。

「定期報告の最新版に新しい報告を発見した。これがこの連中が入手した会話ログだ。」

ジュリアスはそういうと、ログを呼び出してその会話を見せる。

<Sci:新たな素材が手に入ったのか?>

<G:そのとおりです。ペンギンを1羽。お気に召すと思いますが。>

<Sci:了解。ザーフトラ本土に回収する。空港に送ってくれ。部隊を回す。>

「発信元はわかりました?」

もちろん、といいジュリアスはネットワークを逆にたどる。プライベート通信のためかろくに対策もなく、すぐに場所が判明したという。ディスプレイにはカフカス山脈山中のある一点を示す、赤い点がともっている。

「ガラザ要塞。間違いなくここだ。西部方面軍が攻略のためにUAVを飛ばしていたが、その写真を取り込んだら大量の車列が入っていった。非武装の中型トラックがアリャート方面からだ。」

「あなたに任せたかいがありました、ジュリアスさん。」

リヴィエは満足げに笑みを浮かべ、ジュリアスの肩に手を置く。しかしジュリアスの表情は渋いままだ。

「・・・どうしましたか?」

「ガラザ要塞・・・と言えば相当な兵力がいる上に防御も硬い。難攻不落といってもおかしくない場所だ。西部方面軍もこの要塞をさけてバクーを落とそうと決めてるのに、どうやって救出する?」

ふむ、とリヴィエは頬杖をついてディスプレイを見る。旧世代の戦艦から流用した38cm砲や多数のミサイルランチャーを備えた要塞はそうそう簡単に陥落させられるものではない。

ジュリアスも渋い顔をして悩んでいると、カダールとシエラ、ハーネルが入ってきてディスプレイを覗き込む。

「隊長?それにシエラとハーネルも・・・」

「ガラザ要塞、ここにレジーナがいるんだな?」

ええ、とリヴィエもうなずくとカダールは視線を鋭くして要塞を覗き込む。ジュリアスの情報を見る限り、SAMサイトは4基程度しかない。ここにカダールは目をつける。

「ディートリッヒとある程度打ち合わせしなくてはならないだろうが、EC空軍の支援さえあれば救出は可能だろう。」

「本当なのか!?」

ジュリアスが身を乗り出すと、カダールはもちろんだとうなずく。そして恐るべき早さで紙に何かを書くと、作戦室へと向かう。

「隊長、もう作戦を考えちゃったんだ・・・さすが。」

シエラは微笑みながらカダールを見送る。ヴァンツァーの腕前では多分シエラの方が上だろうが、頭が切れるし人をまとめるのもうまい。

しばらくすると、サイレンが鳴り響いてブリーフィングルームへと招集がかかる。すぐにシエラが飛び出し、ジュリアスは最後に端末の電源を切ってから向かう。

「集まったな。では作戦の説明を行う。」

カダールが早速伸縮式の棒を伸ばし、ディスプレイに描かれたガラザ要塞の概要を説明する。シエラが周囲を見渡すと、ヘリのパイロットや空軍の軍服を着た兵士も数名ほど加わっているのがわかる。それなりに実戦を経験してきたのか、緊張している様子もない。

「目的はガラザ要塞。ここにわが軍の捕虜が連れ去られたとの報告が入った。今回の作戦は捕虜の救出を最優先とする。まずEC空軍機がミサイルでSAMサイト4基を破壊する。続いて以前鹵獲したフルーブレスで地上部隊を掃射、最後にわれわれが突入。捕虜を救出する。要塞内部は単純な構造になっている。降下地点からすぐ近くにある要塞と一体化したD格納庫を確保、ここで捕虜救出までの時間を稼ぐ。救出にはアゼルバイジャンの第6空軍強襲部隊(※1)が担当する。彼らが脱出した後、シュトゥルムピングィンのキャリアーが再び空域に突入する。それに載って脱出するまでが作戦だ。質問は?」

カダールが周囲を見渡すと、シュトゥルムピングィンの第2部隊隊長であるトフィク大尉が手を上げる。

「俺たちの出番は?」

「トフィクの隊もともに攻撃をしてもらう。使うのはスリングヘリだが問題ないか?」

ああ、とトフィクは無表情のままうなずいてみせる。他に疑問符はないらしく、ブリーフィングを終えると退室する。格納庫に向かう途上、第二小隊のアーヴィト軍曹がカダールに近づいてくる。

「少佐・・・相変わらず見事な手腕です。」

話しかける機会も少なく、カダールもシュトゥルムピングィンの全員を把握できているわけではない。別行動をとる第2小隊のメンバーは第41独立中隊にいたメンバー以外はわからないのだ。アーヴィトはランカランの時に義勇兵として参加したようだ。

「・・・アーヴィトだったか。どうした、急に話しかけたりして。」

「仲間を救出するために、全力を?」

「もちろんだが・・・変な私情は挟みたくない。あくまでも「捕虜」の救出だ。焦って変な行動に出ると撃墜されてしまうからな。気をつける必要がある。」

了解、とアーヴィトはうなずいてみせる。無論カダールははやる気持ちを最大限にまで抑えているしそれを表情にも出さない。

そうやって抑えきらないと、自分の実力でどうにもならない無謀な行動をしてしまいそうだからだ。

「そういうものですか?」

「あいにくだが俺よりいいヴァンツァーパイロットは無数にいる。お前の上官であるトフィクもその1人だ。自分の強さも弱さも知って行動しなければ死ぬ。戦場だから次がないということを考えると慎重に行動するほかない。」

アーヴィトはなるほど、と納得する。何度も実戦を潜り抜けてきたカダールだからこそ普通にしゃべっても説得力がある。

「慎重に、ですか・・・」

「だが慎重になりすぎるとかえって迷惑にもなる。適度に前に出て、銃弾をなるべく受けずに攻撃する。これが最良の作戦だろう。」

「了解です、実行します。」

参考になったのかアーヴィトは敬礼すると第2小隊が使用する格納庫へと向かっていく。カダールも所定の格納庫に到着し、早速機体に乗り込む。

「準備はいいか?」

『万全です、隊長。ところで・・・先ほどは何を?』

「軽い雑談だ。気にするな。」

了解、とリヴィエはうなずくがカダールはわずかに疑問符を抱く。なぜリヴィエは会話の内容をそこまで気にするのだろうかと重い、少し考えようとする。

『隊長、早く行こうよ?』

「あ、あぁ。」

退屈している様子のシエラに促され、カダールはストームを稼動させて格納庫から外の駐車場に出る。臨時のヘリポートとしての役目も果たせるほど広く、スリングヘリ2機とACH59ファザーンがとまっている。

第1小隊はそのままファザーンへと乗り込み、第2小隊はスリングヘリにつるされるとヘリ3機が離陸。そのまま作戦空域へと向かう。

 

1220時 ガラザ要塞上空

『こちらルスラーン、ソーカル01応答せよ。』

『ソーカル01よりルスラーンへ、所定空域に到達した。攻撃目標を指示されたし。』

輸送ヘリ内部のシュトゥルムピングィンのメンバーは外の無線を拾い、交信を聞いている。AF84ティフォンが対レーダー用長距離ミサイルを搭載し、要塞へと直進する。

『目標は要塞4箇所のSAMサイトだ。位置データは送信済みだ。』

『ソーカル01了解、目標を補足。攻撃する。』

『シュトゥルムピングィン、いい映像を見せるからモニターを所定の周波数に合わせてくれ。』

了解、とカダールはルスラーンに言われたとおり周波数を合わせるとナイトビジョンでミサイルが映し出される。高速で飛ぶミサイルは目標を捕捉、SAMサイトに直撃する。

予備のミサイルに引火し、派手な爆発が起こる。猛吹雪だがはっきりとその炎がコンソールで確認できた。

『・・・レジーナだったら、「きれいな花火だねぇ」くらい言うんだろうな。』

『そうだね。早く助けないと。レジーナだから一緒に入れられた捕虜が肺がんになっちゃうだろうしね。』

シエラはハーネルの言葉にうなずき、レジーナを絶対助け出すと決意を固める。

『・・・葉巻って獄中で吸えるのか?』

『捕虜収容所で堂々とすってたUSN軍捕虜がいたから大丈夫だろうな、看守さえ良ければ、の話だが。』

『そうか・・・』

今頃仲間の捕虜が咳き込んでるんじゃないかとハーネルは不安になってしまう。レジーナの喫煙量は尋常ではなくメカニックが四苦八苦してコンソールや精密機器についた汚れを落としていたのだ。

当然操縦席に灰皿は完備しているしBC兵器用エアコンは常に最大で稼動している。

「無駄話はそのくらいにしておけ。降下ポイントまで1分だ。各機降下準備をしろ。」

『了解!』

カダールがメンバーの気を引き締めさせるように声をかけると、威勢のいい応答が帰ってくる。ACH59は両側面のガトリング砲を連射しながら高度を落としていく。

そして両側面の扉を開くと真っ先にストームが降下、ガストやジービュも後に続く。最後にグロップと110式陣陽が降下を終えると第2小隊のスリングヘリもヴァンツァーを投下する。その後にスリングヘリはそのまま空中に退避する。

『こちら第2小隊、要塞内部のヴァンツァーとIFVが稼動した。これより迎撃する。』

「第1小隊了解、応戦する。」

淡々と会話を交わし、トフィクとカダールは指示を出し要塞内部のハッチから出撃してくるIFVを迎撃する。BMP-8(※2)は10cm砲を発射するがカダールはシールドで受け止めてからバズーカ砲を発射。

10cm砲弾がBMP-8に直撃、爆発が起こりBMP-8は沈黙してしまう。その間にガストとジービュがBMP-8に接近する。

『IFVなど・・・すぐに消してくれる。』

ハーネルはハンドロッドを振り下ろし、そのままBMP-8を押しつぶす。シエラも20mm機銃とアールアッソーCを同時に連射しBMP-8の側面に大量の穴を開ける。

遅れてジュリアスもヴェスペA4を発射。大型の砲弾がBMP-8を貫通し内部で爆発する。すると警告が鳴り響きD格納庫の扉が開放。ヴァンツァーと大型機動兵器が稼動する。

『嘘だろ・・・グリフィン級(※3)稼動!大型ヴァンツァーが2機も!』

「何を驚いている。撃破しろ、ジュリアス!レジーナが待っているんだぞ!」

ジュリアスはあぁ、と落ち着かない様子で返事をする。開発が凍結されたはずの大型ヴァンツァーがいるので驚いていたが、カダールに強い調子で呼びかけられ気を取り直す。

67式が38mm機銃を連射しながら接近するがカダールの発射したプラヴァーが直撃、爆散する。するとその後ろからグリフィンが飛び出てきてショットガンを発射する。

『何このでかいの、動きがいいよ・・・!』

散弾をまともに食らったが、ガストは体勢を整えて20mm機銃とアールアッソーCを連射する。グリフィンは斜線から回避しつつ、ナックルに内蔵された27mm機銃を発射。

サイドステップでシエラは銃弾を回避し、照準を合わせアールアッソーCを連射する。40mm銃弾が直撃するがグリフィンが突撃、弾幕を突っ切ってナックルで殴ろうとする。

『ちょ、こいつ何!?めっちゃすばやいんだけど・・・!』

『あわてる必要はない。1機ずつつぶせ!』

ハーネルがハンドロッドでグリフィンのナックルを殴りつけ、シエラを落ち着かせるように声を張り上げる。シエラはうなずくと気を取り直して20mm機銃を左右同時に発射。

もう1機のグリフィンが接近、ナックルを突き出すがハーネルがハンドロッドで受け止める。そして至近距離でビュジェを発砲する。

『ヴァンツァー1機に大型2機とはな・・・まぁいい、暇な俺の相手をしてもらおうか。』

『ありがと、ハーネル!』

シエラは軽く礼を言うと、グリフィンに射撃を集中させる。するとリヴィエもクラヴィエを発砲、グリフィンの装甲をえぐっていく。

十字砲火は避けることもできず、なすすべなく喰らいバックパックの予備動力が破損。さらに銃弾を浴びせられグリフィンが大破炎上する。もう1機はハーネルのジービュと交戦中だが、ほぼ互角だ。

『1機撃破!』

「後は任せろ。ジュリアス、ターゲットはもう1機のグリフィンだ!」

『了解、攻撃しますよ!』

カダールの指示にジュリアスは応答を返し、ミサイルを発射する。それをグリフィンが回避するが、ハーネルは一瞬の隙を逃さなかった。

『もらうぞ。悪く思うな。』

ハーネルはハンドロッドでグリフィンの足元をなぎ払う。転倒した先にすかさずカダールがバズーカを発射。ハーネルは爆風に巻き込まれる前に後退する。

グレネード砲弾とミサイルが次々に直撃、火花を散らしてしばらくしてからグリフィンが爆発する。政府軍の兵員はあっさりとグリフィン級2機が撃破されたことに驚きを隠せない様子だ。すると空軍の輸送ヘリが降下、

『お、大型ヴァンツァーが2機ともやられた!?』

『ダメだ、押されている!』

第2小隊が周辺のヴァンツァーを掃討。やむなく政府軍はD格納庫を放棄しほかの格納庫への扉を封鎖する。すばやく第2小隊と第6空挺部隊の歩兵が突入すると第1小隊は外で警戒する。

『敵機、まだ来ます!』

外部の哨戒に当たっていた政府軍のヴァンツァーがC格納庫へと向かってくる。そして外部の格納庫からもヴァンツァーが出撃、第1小隊を包囲する。

「ジュリアス、C格納庫の外部ハッチをハッキングして閉じれるか!?」

『無理です、隊長!アクセスできる端末がなくて・・・!』

無理か、とカダールは判断する。ジュリアスが無理というなら絶対に無理だろう。

「わかった、なら俺達が壁になって第2小隊と空挺部隊を援護する。一歩も格納庫に通すな!」

『了解!』

ALH57やACH59が援護射撃を行うが敵機は弾幕を突破してシュトゥルムピングィンに攻撃を仕掛けてくる。67式やクイントFが先陣を切り、105式や150X式が後に続く。

真っ先にカダールとジュリアスが反応、ミサイルを発射する。クイントFの脚部に直撃するのを確認した後、カダールは直ちに10cm砲弾を67式めがけ叩き込む。

『数が多いね・・・何機いる?』

銃弾を撃ちながら敵機を数え始めるシエラの声を聞き、カダールは落ち着けと笑みを見せながら話しかける。

「数なんて気にするな。この程度、殲滅できるだろう?」

『銃弾さえ足りればね。グリフィン相手に使いすぎて・・・』

残りが少ない、ということはカダールも十分承知している。ミサイルの残弾も少ないしバズーカもそれほど余裕があるわけではない。

『こちら第2小隊、弾薬が足りないようだな。』

「トフィク、何かいい手段が?」

『格納庫の弾薬コンテナを発見した。入り口近くに設置するから足りなくなったら補給しろ。』

「了解、助かるな。」

カダールが礼を言っている間にトラックが輸送コンテナを下ろす。するとトフィク搭乗のギザが格納庫から出てくる。両手にジュヴェを装備しリペアバックパックを装備している。

『第2小隊、第1小隊を援護しろ!格納庫前に展開、空挺部隊を守りきれ!』

『了解!』

第2小隊も格納庫から出ると片っ端から歩兵やヴァンツァーを迎撃していく。シエラは負けていられないと思いながらクイントFに20mm機銃を叩き込む。

レオスタンを連射しながらクイントは倒れ、爆発してしまう。シエラは軽くガッツポーズを作りながら弾幕の中、的確に40mm銃弾を浴びせかける。

『こちら第6空挺部隊!構内で現在戦闘中、捕虜はいまだ見つからず!』

『急いでもらわないと困る!こちらの弾薬も無限ではないのだぞ!』

トフィクが声を荒げながらジュヴェを交互に発射。11.4cm砲弾が次々に67式や105式に直撃し爆散させる。しかし、さらに悪いニュースが入ってくる。警告音と共に、パイロットが必死に通信を入れてくる。

『こちらフルーブレス、損傷甚大!すまないが撤退する!』

「もう少し何とかできないのか!?」

『ダメだ!集中砲火を受けて・・・すまない!』

猛吹雪の中、フルーブレスの状況はよく分からなかったがルスラーンのUAV画像からははっきりと煙を吹いているフルーブレスが確認できた。

『何てこと・・・』

『畜生、こんなときに限って!空軍部隊、早く見つけてくれ!!』

『分かっている、そうせかすな!今抵抗にあっていて前進できない!』

激しい銃声が響いているのが通信越しからでもよく分かるが、ジュリアスは早くしてくれと言いたいのをぐっとこらえる。空軍も必死にやっているのだろうが、レジーナや自分たちの命もかかっている。

ジュリアスはヴェスペA4を連射するが、67式2機から十字砲火を受けて両腕が吹き飛ばされる。すかさずリヴィエがカバーに入りクラヴィエを発砲、67式を1機撃破する。

『ジュリアスさん、大丈夫ですか!?今修理します!』

『頼む!こっちはEMPで支援する!』

了解、と答えるとリヴィエはすぐにアームパーツの再結合に入る。何も言わなくてもその間に第2小隊のガストとシケイダが支援に入り、群がってくる67式や105式を迎撃する。

するとジュリアスがEMPを仕掛け、67式の攻撃機能を停止させる。すばやくカダールが支援に入り、動けない67式にバズーカ砲弾を叩き込む。

「ジュリアス、修理まで援護する!」

『感謝します、隊長!EMPが続く限り何とかします!』

声を張り上げてジュリアスはカダールに応答を返す。シエラとハーネルは遊撃部隊として手当たり次第に攻撃し、敵機を破壊していく。

『隊長、増援が・・・でもこの装甲車、何か違う。』

「何?」

シエラがゲートから入ってくるフェザントとミュートスに護衛された9式装甲車を確認する。しかし敵機はグレーに塗装された機体でありエンブレムも見慣れないものだ。カダールも画面を見て、いぶかしく思ってしまう。

『・・・攻撃許可は出すのか、隊長。』

カダーエはハーネルへの返答を少し躊躇する。当然だが敵味方か分かるはずはないのだ。だが政府軍が攻撃しないところを見ると政府軍の協力者と見て間違いない。そう判断すると指示を出す。

「戦闘区域に入った敵機はすべて敵だ。殲滅しろ。」

『了解、攻撃するね!』

第2小隊に政府軍を任せ、シエラはミュートスめがけ銃撃を開始する。ミュートスはダークホッグを発射して応戦するが側面からハーネルが突撃、ハンドロッドをたたきつける。

ダークホッグごと腕が吹き飛び、続けざまにアールアッソーCの銃弾を正面から受けてミュートスが沈黙する。フェザントがクレイジーハマーをガストめがけ振りかざす。

『やばっ・・・!』

左腕にクレイジーハマーを受けたガストの間接部分が破損してしまう。シエラはすばやくアールアッソーCと0mm機銃だけで応戦、至近距離でフェザントに大量の銃弾を叩き込む。

無数の弾痕がつき、フェザントは倒れた後で爆発する。シエラはぐっとこぶしを握り締め、一瞬だけよろこびにひたると次の目標を狙う。

『こちらルスラーン、空軍が航空支援をまわしてくれた!ガンシップ(※5)が今向かっている、何とか持ちこたえてくれ!』

「到着時刻は!?」

『5分後だ、それまで持ちこたえてくれ!』

ルスラーンは無事でいてくれと祈るような気持ちで答える。航空支援を使わないと一掃できないほど敵機の数が増えている。

思わずハーネルが舌打ちするが、とたんに空挺部隊から朗報が入り込む。

『こちら第6空挺部隊、捕虜を全員確保!繰り返す、捕虜を全員確保した!これから脱出を図る!』

「了解、聞いたかルスラーン。早く航空支援をまわすよう言ってくれ!」

『分かっている!ガンシップも全速力で向かっているので何とか現状を維持せよ!』

大量の銃弾が飛来し、何発か直撃しながらもカダールは必死にバズーカを発射、1機ずつ敵機を破壊していく。ジュリアスもすぐに戦線に復帰しミサイルで支援を行う。

『・・・隊長、持ちますか?』

不安な表情を浮かべながらジュリアスが尋ねると、カダールは自信を持てと強い口調で答える。

「誰か1人が成功を疑った時点で作戦の成功率は20%くらい低下する。余計な事を考える前に目の前の敵を撃て、いいな!?」

『りょ、了解!』

必死にジュリアスはヴァンパイアMGを105式に叩き込む。リヴィエも同じ目標にクラヴィエを発砲し、十字砲火を受けた105式はなすすべなく撃破される。

すると、第2小隊の隊員が悲痛な声で連絡を入れてくる。

『4番機爆発、脱出未確認!』

『何・・・!?』

トフィクが機体を向けると、4番機のシケイダが炎上している。2番機のガストも残骸になっており第2小隊の友軍機もボロボロになっている。気になったのか、シエラがトフィクに呼びかける。

『そっちは大丈夫なの!?』

『少々まずい状況だ。部下を基地内部に退避させる。これ以上損傷を受けたら帰還できそうにない。』

了解、とカダールが応答を返すと第2小隊はそのまま要塞の格納庫内部に避難する。トフィクの乗るミュートスとギザは踏みとどまって攻撃を続ける。

「第2小隊は大丈夫か!~キ」

『問題ない、2人やられたが戦力的には何とかなる。残り2分だ、持ちこたえろ!』

気遣いに感謝する、とトフィクはカダールに答えるとジュヴェを発射。カダールもホーネットを発射し向かってくる67式に砲弾を直撃させる。

『後2分!?その前に私たちが・・・!』

シエラが苦しげに声を絞り出しつつ、アールアッソーCを連射して殴りかかってきたゼリアを撃破する。2分間という言葉に半分は過ぎた安心感が出たが、同時にもう持たないとも思ってしまう。

弾薬が足りない、補充している時間もないし回避し続けるわけにもいかない。ハーネルは単独で敵機を撃破しているため支援もできない。

『シエラさん、これを!』

『お・・・!』

110式陣陽が持ってきたのは撃破された67式からはずしたアークバレルだ。すぐにシエラはアールアッソーCをはずし、リヴィエが保持してきたアークバレルを装着する(※6)。弾薬は最大まで装填されており十分使用できる。

すぐにシステムを稼動させ、シエラはアークバレルを発砲。EMPを仕掛けようとしたフェザントに何十発もの銃弾を浴びせる。

『さんきゅー、リヴィエ!このまま行くよ!』

『ええ、もちろんです!』

声に元気が戻ったシエラの様子を見て、リヴィエはうなずくと第2小隊のヴァンツァーを修理しつつクラヴィエを発砲する。37mm銃弾が次々にゼリアに直撃、爆発する。

『残り1分、攻撃の手を緩めるな!』

『・・・分かっている。』

トフィクが叫ぶように指示を出し、ハーネルは聞き流しつつ返事を返すと爆音が聞こえてくるのが分かる。明らかにターボファンが鳴らす重高音はめったに笑みを見せない彼を微笑ませるには十分だった。

『・・・ガンシップの爆音だ。』

「よし、ヘリ部隊は降下準備を!」

カダールも爆音に気づき、ヘリ部隊に指示を出す。すると灰色の影が曇り空にくっきりと浮かび上がる。

『こちらタウース1、攻撃を開始する。目標を指示してくれ。』

『目標座標を送信した、こちらは要塞内部に退避する、思う存分やってくれ!』

了解、と応答が出ると同時に猛烈な銃撃が開始される。時折砲撃も混ざり次々に敵ヴァンツァーを掃討していくのがモニター越しにもはっきりと見える。

すでにシュトゥルムピングィンは要塞の格納庫まで防衛ラインを後退させ、敵機が入らないように攻撃を続ける。ガンシップに対抗できる対空装備を有していないためか敵機はそのまま撤退を開始する。

『敵機は撤退中!いけます!』

『了解、これから降下する。ランチに間に合うよう急いでくれ。』

ACH59とスリングヘリ、そして兵員輸送用の輸送ヘリが降下するとスリングヘリに第2小隊のヴァンツァーが接続される。

輸送ヘリも着陸し、捕虜が何十人も乗り込んでいく。ほとんどがアリャート会戦の時につかまった兵員でレジーナの姿もはっきりと確認できる。すると兵員から無線機を奪いレジーナが通信を入れる。

『隊長、聞こえるかい?後皆も・・・ありがとね、助かった。』

「積もる話は後ですべて聞こう。こっちは最後まで気を抜けない。そのことは分かっているだろう?」

そうだったね、とレジーナは苦笑しながら答え無線機を兵員に返す。輸送ヘリが離陸したのを確認してからACH59に第1小隊のヴァンツァーも乗り込む。

ACH59が離陸し高度を上げるとガンシップが随伴し翼をゆったりと揺らす。これですべての作戦が終了し、捕虜の救出に成功した。

 

アリャート臨時基地 2300時

「あー、ったくよー。」

「大丈夫、レジーナ。ちょいと飲みすぎたんじゃ・・・」

顔を真っ赤にしてウォッカのビンを片手に持ったレジーナをシエラが支え、何とか彼女の部屋まで送ってゆこうとする。帰還祝いで飲みすぎてふらついているようだ。

「ウォッカ飲めなかったんだぞー!こんくらい飲んで何が悪いんだー!」

「あのさ、もうちょっとおとなしくしようよ。騒いだら迷惑だよ・・・」

捕虜収容所でたいした酒を飲めずレジーナは思いっきり飲み明かすつもりでウォッカを飲み干したらしい。シエラはやれやれと思っているとカダールが歩いてくる。

「あ、隊長。今ちょっとレジーナ運んでるの。」

「見れば分かるが・・・レジーナ、無事で何よりだ。」

そっとカダールがレジーナの肩に手を置くと、微笑んで戻ってきたことを素直に喜ぶ。レジーナはそのままふらgふらとカダールに寄りかかる。

「・・・けどさ、何だって要塞まで突っ込んでくるのさ。難攻不落のガラザ要塞なんかに・・・」

「隊長としての責務だ。戦友を第一に考え、助け出せる場合は必ず助け出す・・・とな。」

さっすが、とシエラは笑みを浮かべてほめる。対してレジーナは先ほどまでの明るい表情を見せず、うつむいたままだ。

「・・・隊長、悪いね。部隊の皆にも・・・あたしがヘマしなかったら第2小隊の2人も・・・」

「言っておくが俺は何も強制していない。レジーナを助けるという任務には皆参加するといったから参加しただけだ。第2小隊の面々も覚悟して戦闘に望んだ。それに捕虜救出作戦はいずれやることになったはずだ。」

だから気にするな、とカダールは言うとレジーナは少し気分が良くなったのか顔を上げる。

「・・・ちょいと気が休まったよ。ありがとな、隊長。」

「わかったら早く眠っておけ。首都攻略も近い。」

了解、とレジーナはいいシエラに支えてもらいながら廊下を後にする。ガラザ要塞に強襲を受けたことにより西部方面軍も前進でき、そのまま首都であるバクーへとなだれ込むだろう。

政府軍の残党を作らず、首都に追い込んで撃滅。あるいは降伏を狙う作戦だ。もちろん敵の抵抗は激しくなるが後々に内戦の火種を残さないためには仕方ないとも言える。

「アイゼル、か・・・この戦略がどう出るか。」

作戦の細かい計画はディートリッヒとゲオルギーで担当したが大まかな計画はアイゼルが立案したものらしい。後々のダメージを最小限に抑えるような戦略だがまだ全体像がはっきりしない。

それでも大規模な戦争を起こして、その後の内戦を起こさせないようにしようとすることくらいはカダールにも理解できた。過去、武力革命を起こした多くの国がその後の内戦に苦しんできたのだから、当然ともいえるが。

 

「・・・マジかよ、こいつら・・・」

「どうした、ジュリアス。」

基地の一室でジュリアスが先ほどの戦いの様子を見ていると、意外な事実に気づく。ハーネルも画面を覗き込むと、確かにと同意してしまう。

先ほどの戦いのさなか、要塞外部にヴァンツァー部隊と装甲車が到達していたのだ。ハーネルは渋い顔をしながらじっとヴァンツァーを見る。

「・・・所属部隊は不明。迷彩はザーフトラや解放軍とは違う・・・この部隊がおそらくレジーナを引き取ろうとしたのだろうな。」

「そうだな、後・・・」

ジュリアスが別のウィンドウを開くと、ザーフトラの命令書簡などが映し出される。ハーネルはどこまでハッキングしているんだと疑問符を抱くが心の中に疑問を押しとどめる。

「こんなのもある。アイシャ博士・・・しってるか?2090年にノーベル科学賞を取った人物で今はCISUに在籍してるが。彼女の実験データが2090年初頭にザーフトラに流れてる。」

「・・・脳死からの蘇生を目的として使われた新技術だな。だがこれが何の役に立つ?確かヴァンツァーを稼動させる技術に使ってたが・・・」

「いや、つまりあれだ・・・脳内言語の解読成功、そして再生が可能って話だ。つーことは録画ってこともできるんじゃないのか?」

突拍子も無い案を聞いてハーネルはまさか、と首を振る。そんなことがありえるのか、と言いたげにジュリアスをみつめるが彼は真剣な表情だ。

「・・・もし本当だとしたらとんでもないな。だがデバイスと何の関係が?」

「鈍いな、ジュリアスは・・・つまりデバイスの量産化が可能ってことだ。「祖国達の島」見たか?」

「多少は。」

憮然とした様子でハーネルが答える。ジュリアスはなるほどなとうなずいて本を取り出すとあるページを見せる。

「ハンスが俺に頼んで調査した内容だから良く覚えてるが、B型デバイスをザーフトラが廃止した理由は個体差によっての性能差、稼働率の不安定さもあるが何より数をそろえられないことなんだよ。熟練した兵員のデバイスをそろえたかったら何万も、それも兵士だけを上手く捕獲しなくちゃいけない。現実的にそんなことは不可能だろ?」

「・・・確かに。」

あぁ、とハーネルがうなずくがそこでふと考えをとめる。B型デバイスのことを聞いてPMOで派遣されたメンバーなどに思い当たる節があったようだ。

「まて、ジュリアス。その裏文書で開発停止を決定した時期はいつだ?」

「2090年7月になっているが・・・どうしたんだ?」

日時を聞いて、ハーネルはなるほどと納得してしまう。ザーフトラが仕掛けた陰謀の全容が見えたようだ。

「ちょうどPMO部隊の編成をザーフトラがはじめたのもその頃だ。兵員を選抜しているが納得の行かない人選に医らついた兵士も居るのを覚えている。旧ロシアの軍人は情報局のブラックリストに乗せられたかデバイス関連の施設警備や輸送任務、直接の裏工作にかかわった兵員だ。そして一般兵員の大半はザーフトラの衛星国から優秀なパイロットを集めていた。」

「ちょっと待てよ・・・じゃあ、まさか!?」

「B型デバイスの切り離しにかかったとしか思えないな。周辺国のエースはおそらく自立兵器デバイスの候補にされたのだろう。ジュリアス、その資料だと腐敗しない限り脳から情報が取り出せるのだろう?」

「冗談だろ、そんな計画・・・!じゃあザーフトラはPMOすら生贄にしたっていうのか!?」

とんでもない計画にジュリアスは背筋が寒くなるのを感じた。しかし我に返ってみればザーフトラは冷酷な決断を平然と行える国と言うことを思い出す。

町を巡航ミサイルで焼き払ったり、B型デバイスの開発を進めたりすることができる連中ならそのくらいの計画を立てても不思議ではない。

「・・・連中ならやりかねん。督戦隊が現役で国家の秘密警察も存在する国だ。他国兵士と自国の厄介者を集めたPMOが全滅しても何とも思うまい。眼前で全滅するさまを見ても連中は平然とウォッカを飲めるだろうな。」

説得力があるハーネルの言葉にジュリアスはつばを飲み込む。そしていまさらのようにつぶやく。

「だとしたら、俺達・・・今一番危険な場所に居るんじゃないのか?国家機密級の情報を相手に戦ってるんだ。」

「そんな連中と一緒よりは独立したほうが安全だろう?たかが1部隊のために戦争を仕掛けるバカは居ない。バクー攻略戦に役立つ資料を集めるぞ。」

了解、とうなずいてジュリアスはキーボードを打つが途中で手を止める。その様子にハーネルが首をかしげるとジュリアスが手紙を差し出す。

「・・・どうした?」

「万一のことがあったらシンガポールのジェニファーにこの手紙を送ってくれないか?マサチューセッツの同期で、友人と言えるのはあいつしか居ないんだ。」

あぁ、とハーネルは手紙を受け取る。

「ハンスには送らないのか?」

「あいつは親友だからな。どうせなら好きな人に送ったほうがいいだろ?それに、ハフマンの魂に入ったときに居お互い半年置きにメールを書いてる。何かあったときに送るためのな。」

用意周到だ、とハーネルは納得してしまう。そして手紙を見ると宛名が「マネーメイカー」になっているのを見て何だ、と疑問符を抱く。

「この宛名、何なんだ?」

「向こうで有名になってるからそれで通じるんだ。あるOCUの大物政治家をはめるために銀行のシステムをハッキング、100万OCUキャッシュ(※7)の裏金をどこからとも無く入金させた。もちろんそんな資金をジェニファーが持ってるはずが無いしあっても出さない。もっとも警戒厳重な銀行口座すら手玉にとって資金を作ることすらできるところからそんな異名ができたんだ。」

親友ということでジュリアスは誇らしげに話す。ハーネルもそんなスペンダーが居るのかと感心してしまう。

「美人でもあった。けどその分かなりケチだけどな。彼女が奢ったことは一度も無い。割り勘ですら払わないくらいだしな。「あんた達以外、信じられるのは金だけさ」とよく言ってた。」

「相当苦労したんだろう。だがそんな奴にどうやって信用された?」

「ルームメイトだからな。気が合えばとことん信用してしまう。俺達は全員情報学部ということもあって話も弾んで仲良くなってた。」

ほうほう、とハーネルはうなずき最後の疑問を口にする。

「だったら、何故シンガポールに?そもそもお前も何故アゼルバイジャンなんかにいる?」

「「卒業論文に軍のネットワークシステムをテーマにしよう」ってことにしたのがそもそもの始まりだった。4人でハッキングした後俺の作ったウィルスを流し込んだら予定以上の範囲を侵食して全部クラッシュ。結局俺達は卒業することなく散り散りになってあちこち逃げ回ったんだ。軍はテロリストとして俺たちを追いかけたから俺達は国外逃亡を余儀なくされたんだ。ハンスはOCU領のフリーダム市街に。ジェニファーがシンガポールで俺がここ。」

黙ってハーネルはジュリアスの話を聞いている。ジュリアスはその様子を見て、さらにしみじみと思い返しながら口を動かす。

「俺がウィルスを流し込んだから、司法取引ができないのは俺だけだ。万一つかまったら俺を売って全員助かればいいと思ってアゼルバイジャンまで逃げ込んだ。言ったら悪いがザーフトラの衛星国なんて誰も注目しないからな。大きな騒ぎでもあれば話は別だが、それでも見つかる可能性は限りなく低い。」

「何故義勇軍に?そこまで割り切ったなら・・・」

「地元住民とレジーナにほだされてさ。住む場所が決まるまで無一文の俺に食事や部屋を貸してくれた。それに近所づきあいも良くて、いつしかここが好きになっていた。だから守るために戦おうって。結局守れなかったけどな・・・」

自嘲気味にジュリアスが笑みを浮かべると、ハーネルは問題ないといい肩に手を置く。

「申し訳ないと思うなら行動で示せ。幾ら落ち込んだ顔をしても償いはできるものではない。首都を攻略して、すべて清算することを考えるんだな。」

「ハーネル・・・」

「・・・分かったら早く調べるぞ。時間が惜しい。」

気を使うのか下手なのかハーネルの言葉はぶっきらぼうだったが、ジュリアスはそれでもうれしいらしく涙をぬぐうとまたキーボードを打ち始める。

 

続く

 

 

 

(※1)
空軍にも歩兵運用能力を持たせている。ヴァンツァーの発達により空軍でも自前の戦力を持つことが可能となっている。旧式のヴァンツァーの電子機器をごっそり改造して、時には航空機のFCSにわずかな手直しを加えただけで運用している。またそれほどコストをかけられないため武器腕の運用も多い。アゼルバイジャンでは6個の空軍陸戦小隊が編成され、正規の軍勢になった際は8個中隊にまで拡大している。航空支援を自分たちで行えるため、空挺強襲がやりやすいという利点がある。

(※2)
ドミトーリ公社製IFV。以下設定。

30mm機銃と10.5cm砲を標準装備したドミトーリ公社のIFV。10cm砲からミサイルを発射可能であり、あらゆる局面に対応可能なIFVとなっている。ヴァンツァーはミサイルや主砲でアウトレンジ、歩兵や軽装甲車両は30mm機銃で対応する。
ヴァンツァーに使われる複合装甲の技術により、40mm機銃くらいまでなら耐えうるほどの装甲となっている。追加装甲を装備することにより、対戦車ミサイルやロケットランチャーなどを防ぐことも可能となる。
ただし、コストが非常に高くザーフトラと協力体制をとるCAUでも、経済的に余裕のある国家しか購入できていない。

(※3)
計画が中断されたグリフィン級量産型。以下設定。(ヒストリカの設定も流用)

OCU軍が第2次ハフマン紛争期に極秘開発された大型WAP。単機での局地戦制圧が想定され、機動力と大火力が両立された設計となっている。機体制御用ソフトウェアの開発が遅れ2090年には計画が一時凍結されてしまう。
その後、グランドガンボート計画と対になるEC軍のNHW(Next Heavy Wanzer)計画により計画は復活。採用を希望したOCU日本とOCUインドネシアから購入が打診される。この時採用を争ったのが93式金剛であり日本が同機を採用。グリフィン級はインドネシアが導入した。
前衛型の大型ヴァンツァーであり、長射程のショットガン(パペール製)とマシンガン(ヴァンタム製)一体型ナックルを搭載。「対ヴァンツァー」を意識した市街地戦、接近戦特化型であり機動力もあるが装甲は重装前衛型ヴァンツァーに毛が生えた程度とされている。
インドネシア軍に2092年に引き渡された。他にもシンガポールやミクロネシア各国が導入。バックパックに大型のソナーを搭載したバージョンもある。

(※4)
スペインに1967年発足した銃器メーカー。2021年頃から戦車の砲身なども手がけるようになり2057年に国内の自動車メーカーと合併し社名が引き継がれる。このときにヴァンツァー用火器、そしてWAWの生産も手がけるようになった。
2060年代にヴァンツァーの開発も開始、第一次ハフマン紛争にヴァンツァーを送り出すがそれほど性能がいいわけでもなく主力機とはなりえなかった。
その後、紛争地帯などに売り込む低価格のヴァンツァー路線にシフト。現在は民間用、軍用共に一定の業績を保っている。2090年代から急速に業績を伸ばし、熾烈なEC圏のヴァンツァー業界の競争にも生き残っている。

(※5)
アエロクローネ製輸送機のC-240の改造型。以下設定。

AC-260
ターボファンエンジンを使用する輸送機C-260をガンシップに改造したタイプ。左側面部に12.7cm榴弾砲と40mm機銃を搭載している。対地目標に対して絶大な効果を発揮する反面、制空権を取らなければあっさりと撃墜されてしまう。ヴァンツァー用の複合装甲技術を応用し、対空機銃、高射砲に対しての耐久性が高くなっている。
EC軍で相当な数が運用されアフリカにも輸出されている。攻撃方法は従来型のガンシップと同様、左舷を敵に向けて円を描くように飛行しつつ攻撃する。

(※6)
空の武装をパージする機構。これでバックパックから格闘武装を取り出して攻撃したり、敵機の武器を付け替えることも可能。

(※7)
貨幣の通称が不明なので仮称ではある。このまま採用してもいいのだが・・・ちなみにレートはほとんどユーロと同じくらい。

 

輔弼 NHW計画

Next Heavy Wanzerの略称。ヴァンツァーの運用方法がデュランダルなどの研究機関や軍の実戦データから固まり始めると「指揮官機」の必要性が出てきた。これまでは大型機動兵器を運用してきたが大型機動兵器は「戦車」の延長線上にある兵器が多く高い踏破性能を発揮できる機動兵器はグラスターおよびアルゲム、そしてグローニング級程度しかなかった。アルゲム級は旧式の設計のため、アビオニクスを一新するのにも時間がかかる。
そのためにこのクラスの機動兵器を持たないECやヴァンツァー保有国は「険路の行軍に運用できる指揮官機」を求め2091年に正式にECがNHW計画を発表。各メーカーに発注を行う。
要求項目は以下のとおり。

・火力および装甲の充実。機動力、航続距離は巡航で通常ヴァンツァーに随伴できる程度。
・通信機器および電子機器、FCSの強化。
・踏破性能は既存ヴァンツァーに準ずる。最低でも80%程度は確保。
・MULS-P規格対応。(緊急時に通常の腕に換装し戦力低下を最低限に抑えるため。脚部も可能だが換装は想定していない。)
・サイズおよび幅はヴァンツァーの1.5〜2.5倍程度。(ヴァンツァーが歩行可能な道路の80%を走行可能なため)

これらの要求によって製作された最初の機体がゲパルドシリーズだったが、コスト高と生産性の低さからECドイツのみの配備に終わっている。以下、それらを製作したメーカーおよび機体。

・93式金剛(イグチ社)
・104式強狼(イグチ社、ブルータルウルフ)
・ゲパルドシリーズ(シュネッケ社)
・グリフィン級(JL社)
・アルベリコ・ダ・バルビアーノ(バザルト社)
・アルモンケズ(RA社)
・レクリーズ(DA社)
・バレアレス(マドレ社(※4))

 

 

 

inserted by FC2 system